東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『蝉の鳴き声が聞こえた』

月曜。朝起きたらやけに涼しく、というか肌寒いくらいで久しぶりに長袖のシャツを着る。外に出ても蒸し暑くない。このくらいの気温だと気持ち良いなぁと思いつつ、職場に向かい歩いていると少し蒸し暑くなってくる。

新宿の劇場で起きたコロナの集団クラスターに関して、話題になりやすそうな人物や出来事があり、それでもっていろいろと騒ぎ立てているのは正直なところ鬱陶しいが、それで作品内容についてまでああだこうだいったりするのはちょっとおかしいと思う。実際のところ、制作体制がどうだったのかは知る由もない。至らぬ点もあったかもしれないが、それでも制作の人たちの苦渋の判断も理解できる。もちろん、時世を考えれば、体調が悪いとわかっていたのなら検査をすべきだったかもしれないが。とはいえだ。どんな作品であれ、それが行われて、観に来る人たちがいるのであれば、それはそれで成立しているものなのだろうと思う。好む好まざるでいえば、もちろん意見はあるけれど、総じてどんな作品も上演される権利はあるのだろうし。似たような出来事は、演劇に問わず東京の至る所で行われていて、みんなそれぞれ赤信号を怯えつつ渡り、交通事故に遭わないことを願いつつ、見てみぬふりをしている。結果、事故った人たちだけが「運が悪かった」という状況で、それは極めて息苦しい。

こうなってくると、制作側としてとるべき手段は一つしかない。カンパニーに関わる全ての人の検査をして、『陰性』であることを証明しつつ、公演を行う。もちろん、それでさえ、現時点では陰性というペインティングがつくのだけど、そう頻繁には検査もできない。ただ、それが各制作主体が自腹を切ってやるべきことなのかといえば、疑問で、それこそ、今、政治が主導で検査をして、洗いざらい表に出すしかないのだと思う。もちろん、東京でそれをやってしまったら、どんな事態になるかは火を見るより明らかだろうが、もはや見てみぬふりというわけにもいかないような気もするし、『GO TO トラベル』という謎なことを実施して、行う主体に感染対策を義務付けるっていうのは責任転嫁でしかないと思うのだが、どうなのか。

して、今日。天気予報によると雨が降りそうだったので傘を持ちつつ、でかける。とある仕事で、要町にある『熊谷守一美術館』へ行く。これまで知らなかったことが大変恥ずかしいほど、素晴らしい画家、美術家の方で、自分の求める芸術を追い続けるために画を描きつづけ、賞などには興味を示さず、自分の手に届く範囲の生活圏内で、できることをやりつづけて人生を貫いていた。その生き方がとてつもなく素晴らしいし、作品の色使いの鮮やかさ、暖かさ、あっという間に虜になり、仕事など関係なく、販売されていた書籍を購入。ゆっくり読もう。とても素晴らしい美術家の方を知ることができた。

そのあと、曇り空の池袋から品川方面へ移動。少し移動しただけなのだけど、雲間から晴れ間がでていて、心地いい夕暮れだった。川べりは心地よく、オレンジ色の雲が次第に蒼くなっていき、マンションやビルの灯りがゆっくりと光りだしていく。そして、風は気持ち良い。ぼんやりとしてしまう。近くに木々が植えてあるのだけど、そこから蝉の鳴き声が聞こえてきた。今年、初めての蝉の鳴き声。まだ梅雨明け前だけど、夏はすぐそこに来ていることを感じられる夕方。