東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『ピータードイグ展』

朝、少し仕事で早起き。午前中に仕事を終えてから、少し時間が空いたので、東京国立近代美術館でやっていたピータードイグ展を観に行く。恥ずかしながらこの展示があるまで、ピータードイグさんのことを知らなかった。仕事の都合で、車で移動。北の丸公園の中にある駐車場が3時間300円と書いてあり、それはとても安いなぁと思い停めたのだけど、いざ行ってみると1時間400円だった。あれ?と思って調べなおしたのだけど、どのサイトで見たのか忘れて、見つけられず。まぁ、見つけたとしても結果的に1時間400円なので仕方がない。車を停めて外へ。空が晴れて暑くなってきた。

 

東京国立近代美術館に来るのは初めてだった。これまでも近くに来たことはあったけど、入る機会はなかった。中に入るまで、少しコロナの対応で時間がかかる。マスクをつけなきゃならない日々はやはりストレス。

 

ピータードイグ展はこの日が最終日だった。ご自身の価値観に大きな影響を与えたというカナダの心象風景を描いた作品もとても良かったけれど、トリニダード・トバゴへ移住した後の作品たちに心惹かれた。小津安二郎監督の『東京物語』に影響を受けたというピンクの傘を持った老人の絵は、沖の方に見える蒸気船や、キャンパスの中の防波堤の構図などどこかその影響を感じる気がする。何より、顔の表情がはっきりしない老人の輪郭も、どこか笠智衆さんに似ている。そして、どこか夏の暑さを感じる絵がいい。ピータードイグさんの作品は、幻想的な色使いで単純に綺麗とくくりそうになるのだけど、どこか死の気配を感じるものがあったり、なんというか表裏一体という印象がある。だからこそのすれすれの美しさというか、そもそもそういう生と死を兼ね備えているものとして世界を見ているというような。図録や写真ではなく、実際に目の前で見れることの刺激って、そのサイズを感じれることだと思う。ピータードイグさんの絵はいずれもとても大きい。人の身長よりもでかいキャンバスに色鮮やかな絵がひろがっている。それを体感できること。

 

そして、いろいろな作品の他に、暮らしていた町で映画鑑賞会を定期的に開き、地元の人と集まっては映画を観て、その作品について語りあうスタジオシネマクラブという会を催しているのだという。そのクラブ向けに上映作品を描いた手書きポスターがこれまたいい。『東京物語』や『座頭市』なんかもある。遊び心に溢れて、それでいて一つ一つがきちんと作品としても存在している。ピータードイグさんは、その映画鑑賞会、映画を観た後、観終わった人たちとあれやこれや語りあったのだという。なんだかその話がよかった。実際、小津安二郎監督の作品に刺激を受けるなど、映画をたくさん観ていたのだと思うし、それらにたくさん観て、そのことについて周りの人と語らう場を設けるってすごく素敵な生活だと思う。

 

というわけで刺激を受けた。普段あまり買わないポストカードもつい買ってしまった。外に出て、少し千鳥ヶ淵のあたりを歩く。普段、このあたりを歩くことはなかった。皇居前を走っている人たちが多い。で、千鳥ヶ淵戦没者墓苑に行ってみることに。高速道路の近く、静かな場所にそのスペースがある。敷地の中に入ると、どこかぶわっと全身に感じるものがあった。墓苑で、手を合わせる。何ができるわけではないけれど、御参りができて良かった。

 

というわけで、散歩が終わったらまた仕事。なんやかんや充実した日曜だった。