東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

片一方の靴

イラクで香田さんという若者が殺害された。もちろん、その死は本人の意思によるものではないわけで、非常に痛ましいものだ。ただそういう危険のある場所へ行ったということは本人の意思によるものであるわけで、そこはやはり覚悟を持って行くべき出し、その結果を誰にも文句は言えない。ただ、政府がそれを「自己責任論」で片付けようとすることは間違いだ。確かに危険区域だから行かないでという呼びかけをしたかもしれない。中越地震でてんやわんやしている状況かもしれない。それでも「政府に迷惑をかけておいて」などと発言することは大間違い。役人は、それが犯罪者であろうと国民救出に全力を尽くす憲法的義務がある。その義務を「自己責任論」というぽっとでの言葉でうまく逃げようとする姿勢は疑問。もちろん香田さんにも責任がある。市民レベルで「香田さんが悪い」とかいうのは個人の自由(そうは言ってもNGOの活動を国に迷惑をかけるの一辺倒で駄目と決め付ける安易さには、閉口だけれども)ではあるが、それと同じレベルの発言を憲法上の義務を負う役人が言うのはまったくのお門違い。確かにそうやすやすと自衛隊を撤退できない事情も理解できる。ただ「自己責任論」という容易い逃げ道にやすやすと逃げてる場合じゃないだろう。今後の与党、政府は所詮、決まり文句で逃げるに決まっている。自衛隊の派遣期間がもうすぐ終了らしいが、それを理由にさらに派遣するだろう。日本はアメリカの追随しかしない。目には目をではブッシュ政権と同じ。それでも言いつづけるのだろう。「こんなテロには絶対に屈しない」。

昨日、矢野顕子さんのアルバム「ホントの気持ち」を購入。くるり岸田繁さんが半分以上の曲をプロデュースしている。気持ちのいい曲が一杯。それにしても元夫婦だけど、坂本龍一矢野顕子ってすごい組み合わせだな。どっちも大好きなだ。

ここ2日間、東京は雨の日が続く。秋の長雨。そういうと聞こえもいいけれど、やはり雨は大変。嫌いじゃないけど通勤が厄介だ。傘を差しながらの自転車は大変だし、服が濡れて寒いし。

昨日の夜勤明けに、仕事場から駅に向かって歩いていると道路に何やら黒い物体を発見した。何かと思って見てみるとそれは靴だった。片一方だけ。まぁなんてことはない。よくある風景だ。しかし常々疑問なのだけれども、片一方だけ靴を落としていくというのはどういう状況なのか。なぜその本人は気付かないのだろうか。フラフラと帰路の途中、いつの間にか靴が脱げていて、それに気付かずに電車に乗るのか。歩くのか。家にたどり着いた時、玄関で足元を見て初めて気付いたのか。「あ、いっけねぇ。靴落としてたよ。どうりでスースーするわけだ。」そこに台所から妻がやってくる。「あなた、どうしたの?」「まいったよ、母さん、靴を片方落としちゃったよ。」「まぁ、ドジねぇ。今度からは気をつけてくださいね」夫は鼻をこすりあげて言う。「まったくだ」そして二人は笑ったとさ。そんなことにはならないだろう。夫が靴を落として帰ってきたら、妻も何かしら異常な事態があったと思うはずだし、夫がやばくなったぐらいは思うかもしれない。

それにしても落ちているのが片一方だけというのがなんともいえない。さすがに両方脱げたら気付くからだろうか。両足脱げた方が意外と気付かない気もするけれども。片一方だけ靴を落とす。そこには落とした人だけにしか理解できない事情があるに違いない。急がなきゃいけなかったのかもしれない。靴が脱げてもそれを拾うことさえままならぬほどに。シンデレラじゃないけれども。片一方の靴の落し物には何かしらの物語性を感じずにはいられない。