東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

千鳥日記『神戸在住』

■ 今朝、通勤電車で隣り合わせた2人の女性がいたのだけれども、話し言葉になまりがあってちょっと気になった。聞き耳を立てるつもりはなかったのだけれども、割と大きな声でしゃべっていたので会話が勝手に入ってくる。どうやら地方から就職活動のために東京に来ているといった様子だった。渋谷や原宿、南青山など、東京ならではの地名をあげては、行って見たいとか、住みたいとか話していて、やはりそういった憧れといったものを若い女の人は持つものなのだろうななどと横で思ったりした。女性は言った。「渋谷はね、せっかくだから噂のハチ公をみたいね」といっていたが、彼女達の周りではハチ公は今でも噂になるような存在なのだろうか。

■ 昨日は稽古が休み。仕事後にブラブラと大宮へ行く。駅が大幅に改造されていろんなお店ができたと宣伝していたので遊びがてら。せっかくだからそこへ行ってみようと思ったのだけれども、そこがどこにあるのか分からなくてウロウロしていた。改札の中にあった。ナルホド。それを知ったときには改札を出てしまった後だったので、しょうがないからそこを見るのは帰りにまた電車に乗るときにした。それにしても、これはつまり大宮に住んでいる人は新しく立ったお店に行くにはホームにはいる入場券を購入しないといけないってことになるわけだ。まぁ大宮駅周辺に住んでいる人なんていうのはそうはいないんだろうし、改札から出る前にぶらつけばいいわけだけれども。お店はどっしりと構えた店舗が並ぶというよりは、デパ地下の食品売り場のような雰囲気。電車に乗る前にぶらっと立ち寄るには面白いものなのかもしれない。

■ で、大宮の町をぶらつく。木村紺『神戸在住』(アフタヌーンKC)7巻を購入。およそ1年ぶりの新刊。そのあと適当にご飯を食べようと思い、たまたま目に入った焼肉の店へ。ここがとてもうまかった。タレとかがなく、塩だけをつけて食べるようになっていたんだけれども、カルビとかが肉だけで十分美味しい。ホルモンもいける。で、黒羊というのがメニューにあり、これは一体なんなのかよくわからなかったので、せっかくなので頼んでみる。北海道で食べたジンギスカンでさえ、タレにつけて食べるほどくせのある味の羊肉なのに、この店はタレなどなかった。確かに羊独特のくさみはあるんだけれども、そういうのが好きな人にはたまらないうまさがあった。私的にはかなりオイシイお店を発見した気分。それにしても黒羊っていうのはなんなのだろうか。マトンなのかラムなのかもわからない。肉の部位の呼び名なのかな。それとも羊の種類のなんかなのか。

■ 『神戸在住』7巻は6巻までとは一線を画しているような雰囲気。今までは主人公の周りの人物の話を、主人公の視点から見たいわゆる客観的な視点の話が中心だったが、7巻の話の中心は主人公本人だった。そして扱われる話の中心は『身近にいた人の死』。そこは別にそれほど重要でもないのかもしれないけれども、この漫画は著者の実話に基づいているのか、創作なのかわからない様なお話だ。なんでもない風景やお話など、どうも実話のように思える。とくに今回の話の中心にあたるあるイラストレーターの方の死に関する話の書き方は作り話だとしたらずいぶんと話数を割いている。さらに喪に服すと思われる黒を使ったデザインが表紙などにも使われているあたり、創作にしては作りすぎのようにも思うし。

■ まぁこの際、この話が創作なのか実話なのか、半分実話で半分作ったのかなど、それほど重要ではないのかもしれない。文字に起こして、絵を描く時点で、これは『作品』になるわけだから。コマ割りの感じがちょっと違っていたり、顔のアップが描かれたり、1ページまるまるつかって1コマの絵を描いたりしているのは今までにはなかった。それでもこの作品の持ち味と思える客観的な視点、たんたんとした視点で『死』が描かれる。「死」。それを抱え込む主人公。そしてその状態からの解放。そこにある救い。

■ この作品は徹底的に1人称で描かれている。だからこそ、そこに心が揺さぶられる。僕はこの作品がとても好きだ。

神戸在住(7) (アフタヌーンKC)

神戸在住(7) (アフタヌーンKC)