東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『気になるニュース/『立つ』こと』

■ 気になるニュースがある。直立するレッサーパンダがいるというニュースだ。ニュース番組でその映像を見たけど、確かに立っていた。頭部は茶色なのにお腹の毛が真っ黒なのでなんだか頭と体が別もののように僕には見えていたのですが、どうやらこのレッサーパンダが人気ものなのだそうだ。先週末の動物園入場者が例年の3割増で従業員の方がうれしい悲鳴をあげているとのこと。

■ 立つことができるというレッサーパンダを見に行き、実際に立つことを目の当たりにしてうれしいと感じる人がいる。レッサーパンダという本来は立たないと思われている存在が立つことの珍しさがあるからなのだろうけれども、それだけではないのではなかろうか。例えばこのレッサーパンダがバク転したとしてもそれはきっと立つことに比べたらそんなに大したことではないのだ。立つことが重要なのだ。立ってもらわなければ意味がない。

■ つまり『立つ』ということに人を夢中にさせる何らかがあるのではなかろうか。たとえば赤ちゃんが立つ(もしくは歩く)とする。赤ちゃんが立った日にゃあ親は狂喜乱舞だ。祖父は感動のあまり泣き出す。死んだばぁちゃんにも見せたかったよとか思ったりする。で、ビデオで記録する。写真も撮る。写メールを撮って友人に送信とかもしたりする。その日は家族にとって記念日になる。名付けてうちの赤ちゃんが立った記念日だ。そのまんまだ。等等。どの辺まで盛り上がるのかはその家族しだいなのかもしれないけれども。この『立つ』ということは赤ちゃんの成長過程において重要なポジションにある。

■ まぁ勝手な推測ですが、これはつまり『立つ』ということが進化の過程で他の生物と人間を分ける決定的で重要な違いの一つだからではないのか。人間は二足歩行で『立つ』ことで道具を使う手を確保した。これが火を使うきっかけをうむわけだし。道具の使用と火の使用こそ人間の果たした進化だった。だから人間にとって『立つ』っていうことはそれ自体がちょっと重要な意味を帯びてくるのではなかろうか。まぁ大げさにいってみて。

■ となるとですよ、『クララが立った』っていうアレがそれ単体で、放送が終了して幾歳月が経過した今でも共通言語たり得ていることも、なんていいますか、ちょっとそういうことが関わってるように思うわけなんです。実際のところ、僕だけかもしれないんですが『アルプスの少女ハイジ』ってアニメの詳細は知らないんです。知っていることはスイスのアルプス山脈のどこかでハイジって女の子が生活しているお話だということだけでして、こんなことはタイトルから分かることなんですが。だけどクララが立ったっていうことは知っているんです。それはまぁテレビの特番の最終回特集とかで知ってるんですがね、知ってるだけではなく、なんといいますか飲み込めるんですよ。その状況を。物語をまったく知らなくても、その『立つ』ということがその物語のクライマックスで使われていることを理解できるし、きっとそれは感動的なことにふさわしいんだなと飲み込めるんです。それはきっと『立つ』という動作自体が持つ重要性を無意識の内に理解してるからなのではないのかなとさえ思えてくるわけです。まぁ大げさですが。

■ かといって、まぁレッサーパンダが『立っ』たことくらいであれほど報道されることはどうだろうと思うし、さらに下記の記事なんかはちょっとどうでしょう

『一方、福岡市動物園レッサーパンダ「パンパン」(オス、12歳)も十数秒たち続けることが判明。「ライバル出現」との見方もあるが、同課は「風太君の背筋をピンと伸ばす姿勢のよさや、約30秒間という二本立ちの時間の長さが人気の秘けつ」と太鼓判を押しており、』(5月23日毎日新聞朝刊抜粋)

行き過ぎてる感が溢れているように思う。もういいじゃないか『立つ』だけで。

■ あと、もう一つ気になるのがこのニュース。

『NTTコミュニケーションズは23日、インターネットで香りを伝達する「香り配信サービス」を実用化した、と発表した。これまでテレビやネット画像はにおいが送信できなかったが、この技術を使えば料理番組や花などの画像のにおいを伝えることができるようになる。
 具体的には、香りをデータ化し、ネットを通じてパソコンに接続された「香り発生装置」(別売)に送る。香り発生装置の内部には液体香料が入っており、データ情報を基に液体香料を調合し、香りを発散する仕組みで、「ほぼ無限の香りが出せる」(NTTコム)という。 』(共同通信抜粋)

いろいろ気になるけど、どうしたって気になるのは「香り発生装置」(別売)ってとこだ。そもそも人はそれほどまでして匂いを欲しているのだろうか。そんなに匂いはいらないのではないだろうか。この記事を読みながらふと骨伝導携帯の存在を思い出してしまった。骨伝導携帯を用いて顎で電話している人を僕は見たことがないが、アレは利用されているのだろうか。元気してるのかな、骨伝導。こういった類のことを僕は『資本主義における過剰供給もしくは過剰サービス』と呼びたい。サービスはときに行き過ぎているように思える。

■ 23日(月)。渋谷のシネ・アミューズ『Female』を観る。女性をテーマにした5本のオムニバス。松尾スズキ作品の冗談みたいな物語や塚本晋也作品のドロっとした感じがよかった。石田えりさんとか本当に魅力的な雰囲気を持っていると思う。色香がある。そこにいるだけで性的な雰囲気が漂ってくる。長谷川京子さんみたいな今、人気の女優さんも出ているけどそういう方が持っているものとはまた違う女性の持つ、女性にしか持てない雰囲気を持っている気がする。迫力があっていいなぁと思いながら見入ってしまった。