東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『ロラン・バルトつながり』

はてなダイアリーのコメント欄に未知の方からご意見があるように、どうやら僕と同じ経験をした方がいるようで、確かに紹介していただいたブログの2005年9月4日の『ボランティア』という題の日記に書かれている男の風貌や言動は僕が秋葉原駅で遭遇したイトウ大将とおそらく同一人物と思われる。


■ それにしてもこの日記からは日付までは特定できないが、同じく秋葉原でまったくといっていいほど同じ手口で、しかも奪う金額も900円ってとこまで同じとは。どう考えてもスキがある手口だし、実際この日記を書かれた方も彼のその後の行動(池袋に向かう電車とは反対のホームへ向かう)から彼を十分疑っているわけで、それなのにうまくお金を獲得しておそらく自由の身なわけだ。このイトウ大将、一部の日本人の特性を巧みに捉えていやがる。そしてそういった特性を持つ人間を瞬時にかぎわけて呼び止める判断力。ただの大将じゃない。むろん、成功もあれば失敗も数知れずなのだろうけれど、結構短い期間に少なくとも2人の人間からお金を取っている辺りなかなかなもんなんじゃないのか。まぁお金盗られた男が何をいわんやだけど。もしかしたら秋葉原に行くと今でもイトウ大将に900円を要求されるかもしれないな。


■ にしても、同じようなことをブログに書いている人がいて、その両方を見ていた人がいるとは。ちょっと感動すら覚える偶然だなぁと思う。


■ 5日(月)。夜勤明け。一度家に帰り、夕方になってから池袋へ。シネマ・ロサでやっている冨永昌敬監督の『シャーリー・テンプル・ジャポン・パートⅡ』を観にいく。


■ というのも、以前一緒に芝居をやったTさんからちょっと前に不意に一緒に観にいきませんかとお誘いのメールをもらったから。Tさんには以前、横浜であった冨永監督の特集イベントの際にもチケットを用意してもらったりと、何かと冨永監督つながりのある方だ。今回も冨永さんの映画を観にいくならせっかくだし松瀬にでも声かけとくかとわざわざ誘ってくれたとのこと。冨永さんの新作がかかっているなんてまったく知らなかったので、Tさんが誘ってくれなければ見過ごしていた。ありがたいことです。


■ 『シャーリー・テンプル・ジャポン・パートⅡ』というくらいなので、無論『パートⅠ』があり、今回は『パートⅠ』と『パートⅡ』が続けて上映された。『パートⅠ』は以前の特集で一度観ていたけど、どうやら音に手が加えられているらしいが、僕はどこが変わったのかまったく気付かなかった。


■ 『パートⅠ』はかなり実験性の高い作品でとても面白いんだけど、『パートⅡ』は『Ⅰ』のセルフリメイクになっていてこれもまた面白かった。冗談のような台詞が発せられ、唐突にフランス語のナレーションが入り、みかんを取りに行ったはずなのに最終的にはなぜかスピーカーを拾ってきたりと、理解不能な物語が展開されるけど、もう「なぜ」はどうだっていい気分になってくる。そこに流れる映像が心地よい痺れを与えてくれるからそれで十分。


■ 鑑賞後、Tさんとちょっと話す。以前芝居を一緒にやったときはあんまりいろいろなことを話す時間がなかったのだけど、今回いろいろしゃべれてとても楽しかった。Tさんは特に写真の勉強をされている方で、そういった方と芝居や芸術、その他のことについて話をするととても刺激になる。


■ 演劇に関して、僕が「運動」にこだわり、機知のものの叙述から未知のものを汲み上げることができたらいいな、という最近の考えを話すと、Tさんは写真やデザインの分野でもそういう考えがあると話してくれた。


■ 合成でない限り、写真はそれこそ既知のもの(実際に存在するもの)をフィルムに収めるわけで、しかしいっつも見ているはずの物や風景がフィルムに固定されることで、また異なる姿として観るものの前に出現するわけだ。それこそ機知から未知だ。


■ Tさんが写真の分野を学ぶ入門書を教えてくれたが、それがロラン・バルトの『明るい部屋−写真についての覚書』(みすず書房)だった。僕がロラン・バルトの『記号の国』からいろいろな演劇に関する考え方を受けていたときに、再び別の分野からロラン・バルトを薦められるとは。なんというか、そういう偶然がまたうれしい。『明るい部屋』は是非読もうと思う。


■ レイトショー後だったので、ちょっとしか時間がなかったけど、いろいろしゃべれて面白かった。Tさんもまた一緒に映画行きましょうと言ってくれた。ありがたいことだ。いろいろなところでいろいろなつながりを感じることがあるけれど、なんであれそれは面白い。


■そして台風は近づく。