東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『マクドナルドとかハリケーン』

■ 僕が働いている職場がある天王洲アイル駅周辺は、正確な時期は知らないがそれほど昔ではない時期に海が埋め立てられて作られた土地だ。会社の方に聞いた話ではモノレールを作った頃に出来た土地だとか言っていたが、それがホントなら昭和30年代に出来たことになる。まぁ高度成長期ですな。


■ で、今でこそお台場から新宿を20分ほどで結ぶりんかい線が走るかなり使える駅だけど、わずか数年前まではモノレールが通り過ぎるだけの気取りすぎた名前の駅に過ぎなかった。少なくとも僕はそう思っていたし、天王洲って字面は好きじゃないし、アイル(小島を意味する英語ですな)はないだろうとか思っていた。


■ 最近ちらほら東京ベイエリアとかそういう触れ込みで高級マンションが乱立しはじめているけど、まだまだ住宅街には程遠いオフィス街でしかなく、平日はともかく休日は人も閑散としている。そういった土地に外食産業を営む経営者の悩みの一つはいかにして休日の日の利益を見込むかだろうけれども、どうしても利益が見込めないのならば支出を減らす方法しかない。その一つが営業時間の短縮だろう。


■ 外食ファーストフード業界の雄であるマクドナルドの天王洲郵船ビル店は土日祝日の営業時間が18時までだ。開店の時間が6時30分とがんばっているが、それでもずいぶんな営業時間だ。コンビ二の24時間営業が当然になり、その影響でスーパーマーケットですら22時や23時までがんばって営業しているご時世に18時に店を閉める潔さよ。


■ まぁそのくらいの潔さでもって挑まなければお客さんが望めないのならば、それもまた一つの戦略なのだろうし、むしろなんだかほっとさせてくれる。年中無休や24時間営業がもはやちょっとした郊外でさえ当たり前になってしまっているご時世に、世界的都市東京であっても、客がいなければ店を閉めるというのは当然といえば当然のことだ。目に見える過剰な便利はもう十分提供されてきた。もうそろそろ便利だけではない世の中になってもいいんじゃないか。


■ 批評の文章を書けるというのは僕にはとても優れた才能だと思う。そしてまたすごい文章を書くブログと出会った。何より読ませる。次も読みたくなる。こういう方が当然のようにブログをやっていると自分が拙すぎて情けなくなる。


■ どの文章もとても読ませるけど、この方の書かれたスピルバーグ監督作品である『宇宙戦争』のレビューは刺激的だ。


■ その文章にいろいろ感じたのは、またもやアメリカに上陸したハリケーン『リタ』のニュースを見るに、ハリケーンから逃れようと車で逃避する人の映像があまりにも『宇宙戦争』の中で逃げ惑う人の姿と酷似しているからだ。


■ 夜の闇に長蛇の車の列のライトが煌々と照らす赤い光。ガソリンが無くなり途方にくれる人々。逃げるために乗ったはずのバスが道路上で炎上して、命を落としてしまった方々。車さえもなく、ハリケーンが来ることを知りつつも逃げることすら出来ない貧しい生活を送っている人々。


■ 途方もない力によって崩壊を余儀なくされる。その点で宇宙戦争とハリケーンは似ている。なぜ自分がこんな目に遭わなければいけないのか。運が悪かったと嘆くしかない。僕はその光景を「たまたまその被害を受けなかった」だけの存在として、そしてまた圧倒的に無関係かつ無力な立場として呆然と見続けなければならない点でも宇宙戦争を見たときと被る。


宇宙戦争を退屈に感じた人ほど幸福なのだろうと書くこのブログの著者の方の意見にとても共感できる。現実は圧倒的にあっけなく、人間は平等に無力でしかない。もはや壮大な物語が語れる現実はなくなっているのではないか。スピルバーグはハリウッドという資本主義の塊のような空間で、お決まりごととしてのエンターテイメントをあっさりと放棄しつつ、それでもなおかつエンターテイメントとしての存在を保ちながら『「9・11」後の映画』を完成させていた。


■ 短期間の間に連続するアメリカのハリケーンにしても、9月の終わりに関東を直撃する台風にしても、どうやら世の中はいよいよやばくなっている。きっと「怖いねぇ」としみじみしているだけでは無視できない時代に突入しているのだろう。きっと人間の支配できる地球はゆっくりとそして確実に終わりに向かっているのだろう。


■ そんな中で、ただただ資本主義の歯車の一つとしてしか生きていくしかない無力な自分。天気が悪いといろいろネガティブにしかならない。