東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『格付けチェックと偶然』

■ 一昨日、テレビ朝日系列で「芸能人格付けチッェク これぞ真の一流品SP」という番組を放送していた。かつてダウンタウン浜田雅功がやっていたバラエティ「人気者でいこう」の中のやられていた企画がそれだけ切り取られて特番になっていたのだ。


■ たまたまチャンネルをいじっていたら発見してそのまま見ていた。懐かしいなぁと思った。「人気者でいこう」が放送していたころよく見ていた。ある状況下に置かれた芸能人が右往左往する様を設定して、その様を視聴者は見て笑うという構図は、例えば今ならロンブーの「格付けする女たち」やQさま!の「ビビリ王決定戦」という風にテレビ朝日のバラエティに受け継がれているようにも思う。


昨日、紹介させていただいた方のブログの2005年9月19日の日記にある非常に刺激的なテレビのバラエティと小泉政権に関する文章を部分的に引用させてもらうなら

『芸人の身体性ではなく、なにより「アクション」すべき位置に一般視聴者の座を仮構することで、芸人たちのリアクション正当性を<担保>にしてみせた』

という画期的なシステムによってバラエティの構図を打ち出したロンブーの「格付けする女たち」を一つの完成形とみるならば、「格付けチェック」は視聴者の存在はまだアクションの位置においてないにしても、製作者側が作り出した悪意ある設定の中で、少なくとも傍観者として事前に解答を知りながら芸人たちのリアクションを笑うという、そのシステムの前段階にあたるものをもはや作り出していたと思う。

(ちなみに「ビビリ王決定戦」は悪意ある設定を製作者側が作り出してはいるが、あえて極限状態を設けることで、もはや芸能人という枠組みを外れた視聴者と何も変わらない単体の人間の状態にまで、参加する芸人たちの役柄を落としている。穿った見方をするならば、「格付けチッェク」はまだ芸能人が芸能人だからこそ見せるリアクションが重要で、だからむしろアクションが濃い芸人よりも一つ明確なキャラのある芸能人(今回なら石田純一とか和田アキコとかか)の方が適任であると思うが、ビビリ王ではそういう芸能人は呼べない。というか、設定として視聴者と変わらない一個人を必要とするからむしろまだアクションさえもままならない(一般人と変わらないような)若手芸人たちがふさわしい。実際、若手芸人たちはその極限状態でリアクションさえも取れない状況に陥る。そこに既存のバラエティの風景はない。しかし、それでもそこに目をむけてしまうのは、それがもはや面白さとかを越えて「あの立場に自分がいたら」という想像を視聴者に喚起させるからで、結果的にはリアクションの奇跡が生れなくても(おそらく若手芸人にこの奇跡を起こせる人はそういないし)、その極限状態をクリアしたことで生じるある種の「感動」状態によって、とりあえずめでたしめでたしとなる。この「感動」がかなり肝だ。このビビリ王はかつての「お笑いウルトラクイズ」ともまた似て非なる番組だ。「お笑いウルトラクイズ」は極限状態に置きながらも芸人にリアクションを要求した。芸人にしかできない奇跡を徹底的に求めた。この2番組の違いを考えるなら、それは参加する芸人に要求する役柄が一般人の代表としての芸人か、芸人を代表しての芸人かといってもいい。おそらくビビリ王はお笑いウルトラクイズと同様に見える極限状態を設定しているとはいえ苦情の数は比較にならないほど少ないのではないか。まぁ勝手な推測だけど。それは間違いなくこの「感動」による。だいたい24時間無理やり人間を走らせるといった常軌を逸した行為になぜか人々は涙するといったおかしな事態だって「感動」が作り出した奇妙な罠だ。あのマラソンお笑いウルトラクイズの企画に何の違いがあるか。しかし両方とも同じテレビ局がやっているというのもなにやら冗談に思える。最近のテレビは最終的に「感動」を持ってくることで番組をつくることに味をしめている気がする。まぁそんな状況さえも皮肉にして笑ってみせたのが昨年の27時間テレビ「めちゃめちゃ起きている」だったけど。とにかくこういった点で良くも悪くもビビリ王もまた現在供給過多のように溢れている若手芸人たち巧みに使い番組を成立させるかことに成功した企画ではないか。)


■ 話はそれたけど、この「格付けチチッェク」を大学の教授たちに参加してもらい大学の学園祭の企画でやろうと考えたのはその当時の学園祭副委員長で、僕は同じく学園祭の委員としてその企画に加わっていた。その副委員長とワインやチーズといった格付けに必要な品々を予算内で購入したり、ビデオカメラを抱えて教授たちの部屋を行ったりきたりしていたのを思い出した。


■ この企画は当然、その企画に参加する人々のリアクションが重要で、「格付けチェック」が面白いのは見事に面白いリアクションを見せる芸能人たちの力によるところも多いわけだ。実際に一昨日の特番でYOUやココリコ遠藤が見せた奇跡に近い展開は、かなり面白い状態を作り出していたと思う。


■ 当時の副委員長はその点で、当然いつもは勉学に勤しむ教授たちが単に企画に参加するだけでは企画自体の面白みが不足することを理解しており、ちょっとした細工を事前に加えた。時効だと勝手に決めて暴露すると、参加する教授陣の中に一人だけ全ての格付けに不正解をする男を事前に用意したわけだ。こうすることで、リアクションに期待があまり出来ない分、少なくとも構図だけは明確になることで企画全体としての見え方をよくしようと考えた。


■ こういった構図重視で形作ろうとすることが「格付けチェック」の面白さの肝にふさわしいのかはおいといて、実際、教授たちは真剣に取り組んでくれたおかげで、格付け自体はばらつきのない状態になってしまった。少なくとも構図に関しては最下位がはっきりとなったので、見やすくなっていたと思う。まぁなんにしても、そうやっていろいろやっていたのも学生時代の思い出だ。


■ その不正解する一人の男に白羽の矢を立てたのが、その当時助手という役職にいて僕らがとてもお世話になっていたK先生で、まだ30代前半でとても若く、年齢も教授たちより僕たちに近かったので、何かこういうイベントを僕たちがやるとき、むしろこっち寄りに立っていろいろ参加してくれた方だった。


■ 一昨日「格付けチェック」を見ながらいろんなことを思い出した。


■ で、これはプライバシーにも関わるので多くは書かないけれど、ここで途方も無いような偶然が重なり、実は副委員長もその助手のK先生もその「格付けチェック」をそれぞれ見ていて同じようにいろいろ思い出したりしていたことが昨晩判明したのでした。


■ 副委員長は現在大阪にいて、K先生は北海道の帯広にいる。で、僕は関東だ。それぞれたまたま「格付けチェック」を見ていたことになんだか驚いた。そしてさらにここでは書けないとんでもない偶然も重なっていたのだ。いやはや奇妙なシンクロを経験した瞬間でした。