東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『大阪の週末』

■ 週末のことを少々。11日(土)。羽田空港から飛行機に乗るために早朝から電車に揺られる。荒川にかかる陸橋にさしかかったときに朝日が飛び込んできた。オレンジ色でとてもでかい。きれいだった。朝からいいものを見た。


■ 旅のお供に文庫本をと思い、本棚から中島らもさんの『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(朝日文芸文庫)を引っ張り出す。1960年代にらもさんが過ごした高校時代の楽しい日常と浪人時代の鬱屈とした日々のエッセイ。中島らもさんご自身があとがきで書かれた言葉を使うのならば、1960年代の「時代のフレーバー」がどこか漂ってくるよう。そしてそこにらもさんの出身地である大阪という土地ならではの特有の何かが加わっている気がする。底抜けに明るくて、そして時にどうしよもなく寂しくさせる。

『僕は学内闘争には参加しなかったが、それは自分が超個人主義でネガティブな性向の人間であり、若者らしい義憤やヒューマニズムに欠けていたからである。心の一面では、実りのない闘争に体当たりしていく友人たちの「若気」をうらやましくさえ思っていた。』


■ 今回乗った飛行機の機内ラジオで矢野顕子さんの特集が流れていた。大阪まで50分。本を読みつつ矢野顕子さんの歌を聞く空の旅。井上陽水さんとコラボレーションした曲『架空の星座』がとてもよかった。


■ こっちの都合で伊丹空港経由の飛行機を取ってしまったのだけど、友人の結婚式はりんくうタウン駅というところに直結しているどでかいホテルである。そこは関西空港の隣の駅。梅田で予約しておいたホテルに荷物を置いてから急いでりんくうタウンを目指す。意外と遠い。関西空港使ったことないけど、これ、ちょっと不便だなと思った。南海電鉄の急行に揺られていると途中で堺や岸和田といった聞き覚えのある地名の駅を通過した。番長とかだんじり祭とか愚連隊とかそんなイメージしかないのだけど。もっとゆっくり出来たらいろいろ見れるのだろうけど。


■ 結婚式はやはりいいなぁと思った。友人の幸せそうな顔を見ていると楽しくなってくる。結婚する新郎Tくんのために、僕の友人でもあるH君が2次会で歌をうたっていたのだけど、H君のやさしさとか結婚する二人を祝おうとする気持ちが伝わってきてとても良かった。幸せな気分をおすそ分けしてもらえた。


■ 2次会が終わってから難波まで戻ってきて、H君、そして同じく式に出席した大学時代の同期であるI君と3人で飲む。大学時代の懐かしい話から現在、そして今後の話までいろいろと話す。話題は尽きない。それから山頭火というラーメン屋へ。確か東京にもある有名な店だったと思うけど、大阪で食べることになるとは。「東京の店と味が変わらないな」とH君。美味しいという意味でだけど。チェーン店とか姉妹店っていうのはやはり全国展開しても味が一緒なのだろうか。微視的な視点では地域ごとに味付けの好みや違いとかある気もするけど、巨視的な視点では日本人に共通する好みの味というものもあるのだろうか。全国どこでも同じ味が食べられるというのは有難い気もするけど、そればかりだとつまらない気もしないでもない。山頭火はずいぶん混んでいた。


■ 12日(日)。大阪在住の友人Yしゃんと会う。3月に共通の後輩が結婚するにあたり北海道の帯広で結婚パーティがあるのだけど、残念ながら行けない。芝居の本番の真っ最中だった。せっかく帯広に行ける機会だったのに。最後に帯広に行ったのはいつだろう、もうずっと昔の気がする。Yしゃんも都合がつかず行けないとのこと。まぁこればかりはタイミングの問題なので仕方がない。それで結婚する後輩からの希望で僕らが映っているビデオレターを作って送ってくれといわれたので、Yしゃんといろいろ話し合って大阪の街をフラフラと歩きながら撮影をすることに。


関西テレビ、新世界と通天閣日本橋、それから難波にある場外馬券場から高島屋まで、思いつくままにフラフラとでかけて撮影してみる。串かつやたこ焼きなど食う。串かつって不思議な食べ物だ。揚げ物なのだけど衣がパン生地みたいな味がした。でも美味しい。あと日本橋の電気街は本当に秋葉原と似ている。不思議だ。同じようなものを販売する店が集まると、こうやって同じような様相を呈してくるのだろうか。ただ、日本橋の場合、どうしてそれがまかり通っているのかよく判らないのだけど違法コピーのDVDを平然と路上で販売している輩がいて嫌な気分にさせられる。我が物顔でDVDを販売しているやつらを見ると本当に腹立たしい。でも、そういう輩がそうやってDVDを販売しているのは、それに需要があるからなわけで問われるべき問題は消費者側にもある。その作品を観たいのならば、映画館に必ず行けとはいわないまでもレンタルとかケーブルテレビとか正規のルートで、それ相応の対価を支払ってみるべきだ。本来なら鮮明なままのはずのお金の流れがいつの間にか濁り、澱んでしまう。その一端を垣間見た気分だ。


■ Yしゃんといろいろ話す。ちょっと驚かされる話も聞いた。例えば友人の結婚式なんかに参加すると実感が伴うだけになんだかものすごく時間の流れというものを感じる。学生時代に一緒になってくだらない事をやって笑っていた仲間たちが次々と結婚していく。中には子供がいる人もいる。僕も26歳だし、まわりの面々もその前後だからそういう時期だといえばそうなのだろうけども。やりたいことを楽しくやっているつもりなのだけど、そういうまわりの人たちを見ると、どこか考えさせられることもある。


■ 夕方になった大阪は寒かった。ビルの電光掲示板に示されている気温は3℃だった。Yしゃんと別れて伊丹空港行きのバスに乗る。淀川を渡ると空が夕焼け色に染まっていた。だけど夕日は見られなかった。すごくぼんやりとする。19時発の羽田行きの飛行機は満席だった。また矢野顕子さんの特集を聞く。さすがに疲れて眠ってしまった。そしたらあっという間に東京の空の上。モノレールで浜松町まで出て駅のホームで電車を待っていたらとても寒かった。大阪も寒ければ東京も寒い。日本全国まだまだ冬は厳しいのだなぁと思った。