東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『4日目/モローラ』

■ 12日(日)。公演4日目。仕込みから数えるとすでに5日ほど高円寺に通っているわけで、まぁ冷静に数えるとたかだか5日なわけだけど、それはそれでなんだかすっかり高円寺にも慣れてきた感がある。


■ なんとも暖かい日だった。冬用の厚手の上着をやめて少し薄手のジャケットを着て劇場に行ったら、他の役者さんたちもみんな少し春っぽい格好で来ていた。梅も昨日よりもたくさん開花していた。春なのでした。


■ そして昼夜二回公演。それぞれ一箇所ずつ微妙なミスをしてしまった。それもまた思いもよらぬミス。後から考えてもなぜそういう風に動いてしまったのかよく判らない。流れの中で、そう動いてしまったとしか言いようがないのだけど、そういう言い訳しか出来ないこともまた情けない。それ以外の部分はいつものようにやれた気もするのでまぁいいかなと勝手に前向きに考えてみる。


■ 公演後の飲み会に参加。ある役者さんから、僕の長台詞のシーンの台詞の言い方がいつもと違っていたという意見を頂いた。なんとなくテンポが悪く聞こえたらしい。自分としてはいつもと変わってない気がしたのだけど、おそらく無意識のうちにゆっくり言っていたのだろう。きっとその台詞を毎回聞いている役者さんの方が音として台詞をとらえる感覚は正確だろう。リズムの微妙な変化も気づきやすいはず。こういった無意識のミスをもっと気をつけなくてはいけないなと改めて反省。それにしてもお酒は疲れている身体にはつらい。あっという間に酔っ払ってしまう。22時頃に先に帰らせてもらった。日曜の夜なので電車は空いていたのだけど、ちと肌寒かった。


■ 23時頃に家に着いてから、NHK教育テレビの『芸術劇場』でやっていた『モローラ−灰』を途中からだけど見る。力強いお芝居だった。演出家であるヤエル・ファーバーさんがこの作品について語っているアフタートークの様子も放送されていたのだけど、ヤエルさんは9・11の映像でみたビルから降り積もる灰を見て、この作品を作ろうと思い立ったと語っていた。『モローラ』はギリシャ悲劇オレスティア三部作を現代の南アフリカに舞台を置き換えて、アパルトヘイトの問題も絡めた作品になっている。オレスティア三部作は父を殺した母を娘と弟が殺すという復讐の話らしいのだけど、この『モローラ』では娘と弟は母を殺すのを最後に思い止まるという結末に変更してある。その点に関してヤエルさんは復讐と憎しみの連鎖は断ち切らなくてはならないと語り、そうしていくためには被害者と加害者が真実を共有して和解をすることが大事だと続けた。ストレートにその思いを描いた作品だったと思う。舞台上で演奏される南アフリカ・コーサ族の音楽がとても印象的だった。出来れば全部見たかったけど途中からでも見れてよかった。