東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『新宿の果て、ギターが響く』

■ ある仕事で調べ物があり、久しぶりに図書館へ行く。デザインの棚には今まであまり行ったことがなかったけど、興味深い本がずらり。横尾忠則著 『家族狂』とか、近藤勝也さんによる『海がきこえる』のイラスト集『僕が好きな人へ』とか。しばし立ち読みふける。で、仕事に関する資料を2冊と松本人志著 『図鑑』という本と借りる。『図鑑』を読みながら笑いの根源には、何かを見たときそれにつっこみをいれる感性が重要なのだと感じる。つっこみとはすなわち批評だと思う。松本人志さんは漫才ではボケだけど、本質的にはつっこみだ。『インコース婆』とか『兄/5』にほくそ笑む。といっても未読の人には判らないか。


■ 仕事で友人から誘われていた芝居を観にいけなかった。申し訳ない。仕事が忙しく、なかなか時間が取れない。不義理ばかり。


■ それで21時半ごろ、新宿駅南口のあたりを歩いていたら、路上でギターを演奏している人がいた。なんとも素敵な演奏なのでしばし立ち止まり聴く。一曲披露した後に、あいさつしていて気付いたのだけど、この人は『音更(おとふけ)』と名乗るギター奏者だった。それで過去とつながる。あれはいつだったか。日曜の夜だったのは覚えている。そこは新宿駅西口だった。人通りが多い中で2人組みのバンドがギターを演奏していて、僕はそれを聴いていた。ギターの音がアンプから響く。それを聴くために立ち止まる人。音楽を気にしながら通り過ぎていく人。気にも留めないそぶりで通り過ぎる人。なにかそこには一つの世界があって、僕にはある一つの形を成した『新宿』として浮かび上がってきて、とても印象に残った。それでふとギターを新宿の路上で弾く2人組みの若者を主人公にしたお芝居のイメージが浮かんで、それを作品にした。その時ギターを演奏していたのが『音更』だった。


■ 今日、目の前で演奏をしていた『音更』は1人だった。でも、とても素敵な演奏で、最初は少なかった人だかりも終わりの頃にはずいぶん増えていた。終わった後にチラシを頂いたのだけど、それによると現在は都合により名前はそのままでソロ活動中なのだという。それを知って、少し不思議な気持ちになったのは、僕が書いた作品でも主人公の若者2人はやがてコンビを解消し、片方だけで音楽活動を続けるという設定にしていたからで、いや、だからどうってことではなく、それは全然関係ない別の話なのだけど。『音更』に何があったのかはよく判らないし、そんなことは知る必要はない。とにかく、ギターの演奏はとても良く、まだ少し蒸し暑い新宿の夜にいい具合にマッチしていて、新宿はやはり新宿なのだなぁと思ったりしたわけでした。