東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『運動する悦び』

■ 仕事場のあるビルの1階部分は小さな保育園のような施設がある。よくビルの前でそこに通う子供たちが三輪車に乗っているのだけど、それを見ていると乗り物は決して移動手段だけのものではないなと思えてくる。


どこかへ行くわけではなく、その場所をぐるぐると三輪車で子供たちが走るのはなぜか。それは三輪車に乗ること、ペダルを漕ぐことそれ自体に悦びのようなものがあるからなのだと思う。


何も三輪車に限ったことではない。自転車もそうだ。移動手段としては車や電車にははるかに及ばない。それでも自転車に乗るのは、スローライフとかロハスとか健康的とかそういったよく判らない言葉で言い表せるものだけではなくて、自転車を漕ぐという運動それ自体に快感にも似た悦びがあるからだと思う。中上健次さんのエッセイ「America,America」の中に、アメリカを車で旅している最中に車を運転することそれ自体に悦びを見出す場面がある。松尾スズキさんの映画『恋の門』では、漫画を描く手の運動が気持ちよすぎて「気持ちいー!」と叫ぶシーンがある。どっちも僕が好きな場面だ。そういった繰り返しの運動の中に気持ちよさを感じる部分というものが人間にはあるんじゃなかろうかと僕は思う。


■ で、この話は終わって、別の話。かげわたりのギター鈴木くんから、鈴木君選りすぐりの楽曲がたくさん入ったCD-Rをもらったのは去年の終わりだった。前から気になっていたPeter, Bjorn And Johnの曲も入っていてすごくうれしかった。その中に『花のように』という不思議な名前のバンドの曲が2曲あった。このバンドの曲がとてもよかった。特に『夢の人』という曲がすごく好き。鈴木君に聞くと、なんでも友人のライブを観にいったときにその日のライブに出演していたバンドなのだとか。いや、ほんと、世の中にはまだまだ素敵な音楽を作る未知のアーティストがいるもんです。単に僕の視野が狭いだけなのだけど。でも、ほんといい曲でした。


■ 今日の空日記。昼は気持ちよい天気だったけど、夜は冷え込んできた。話はまた少し戻る。今日の夕方、フラフラと例の三輪車の子供たちの前を歩いていたら、その子供たちの面倒を見ている保母さんから「すいません」と呼び止められた。その人には手の届かないくらいの少し高くなった雨どいの上にひっかかったものを取ってほしいと頼まれたのでした。でかいのもたまには役に立つ。ひっかかっていたものはぱっと見、棒切れのようだったが、取ってみると竹とんぼのプロペラ部分でありました。なんとも久しぶりに竹とんぼを見た。