東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『Kids with Cameras/WALL・E』

■土曜は朝早くから起きて洗濯、それから歯医者へ。以前、銀歯が取れた箇所に新たな銀歯を入れる。それで終わりかと思いきや、終わり間際に「あともう少しですね」と言われてしまう。で、来週もまた予約をいれる。毎週土曜日は歯医者の日になっている。

それから有楽町へ。久しぶりの有楽町。前の職場の時は、どういうわけか頻繁に有楽町に行っていた。映画を観に行くというのが大半の理由だけど、なぜか一月交換のコンタクトも銀座に取りにいっていた。今は、さすがにそれは止めて池袋で受け取っている。で、そういった流れが出来ると途端に有楽町に行かなくなる。

久しぶりに訪れたのでぶらぶらと歩く。銀座は週末ともなると人が多い。何が違うっていうと判らないのだけど、渋谷や新宿とは異なるあの雰囲気はなんなのだろうか。つい最近、小林信彦さんの『日本橋バビロン』を読んだばかりで、それでステイタスとしての銀座を考える。ブランドものを出す店が多いとはいっても今では、そういった店は六本木やら渋谷やら新宿やらにも(多分)あり、もっといえばジャスコとかに行けば東京に行かなくたってありそうな(さらに、多分だけど)気がするけれど、それでもなお銀座に人が向かうには、銀座の銀座たる何かがあるってことなのだろうか。

ぶらぶらと歩いていると、元祖カツカレーの店と看板を掲げた店を発見。カツとカレーが大好きな私なもんで、そこにふらりと入る、と、カップルやら家族連ればかりで1人でテーブルにつくことは気まずさ山の如し。とはいえカツとカレーの誘惑がよぉ、気まずさに勝る訳ですわ。僕の後に、隣のテーブルに座ったカップルが、メニューを見るなり「ここ元祖なんだって」「へぇ」「ウィキで調べなよ」「ねぇ」「ウィキでカツカレー、元祖で調べなよ」「うん、ウィキで調べる。元祖、調べる」なんて会話をしており、そういう会話を聞くと二度とウィキペディアなぞ開くかよという気分になったりする。それとはまったく関係なくその店のカツカレーは美味しかった。


■それから『未来を写した子どもたち』を観る。インドの売春街を訪れた女性写真家が、そこに生まれ暮らす子供たちのためにカメラ教室をはじめる。カメラを渡された子供たちは、自分の撮りたい写真を撮るために街へ飛び出す。

何をもって彼らはシャッターをきるのか。

ある子供は、「写真てすごいよ。写真を撮っておけば亡くなった人にだっていつでも会うことが出来るんだ」という。
ある子供は、「田舎の町では泥で家が建てられているというけど、この街(売春窟)の方が絶対に環境がひどい。食器の横に履物がある。僕はそういうこの街にありのままの姿を撮りたい」という。

レンズは様々な被写体に向けられる。人物、動物、建物。子供たちは、それぞれの感覚で、自分の世界を切り取っていく。その瞬間溢れ出したなにかを永遠のものとして切り取る運動。僕が生きてきた場所とはまったく異なる世界の中で、彼らは決して目を逸らさない。



■日曜は『WALL・E』を観た。700年もの間、人間が見捨てたゴミだらけの地球上を掃除し続ける1体のロボットの物語。700年前の人間たちは、実写で演じられている。それで、この映画では人間は実写で描かれるのかと思いきや、700年後の人間たちはCGアニメーション。700年後の人間たちは機械がないと生きれないくらい太り、足腰が退化しており、それはまぁ当然実写でやるのは厄介だろうからなのだけど、じゃあなぜすべてCGで描かなかったのだろうかと考えると、この実写〜CGへの描写の違いが、そもそも表現になっているのではないかと思えてくる。

そうやって映画を観ると、エンドクレジットで再び地球に戻った人間たちの生活をエジプトやらの壁画のような描き方で紹介しつつ、各所に手書き風のイラストが挿入される。そこもまたCG〜手書きへという表現方法の違いによってCGでディフォルメされた人間のある種のステップアップを表現しているように感じる。さらに描写が昔のゲーム画面の様なドット画になり、本編で生き生きとしたCGアニメであった主人公のロボットたちのストーリーが再現されるが、そこには超リアルなCGとは異なる面白さも感じる。

なにも原点回帰とかCGよりも手書きだとかいうわけではなくて、もっと単純に、アニメーションとしての表現方法がCGによって増えたこと、それらとそれまで使われてきた表現方法をいろいろひっくるめて一つの映画を作ろうとする遊び心と、表現への意思が伝わってくる。『WALL・E』の根底にある重要なテーマがストーリーの中で、巧みに表現されているように、こういった手段にも思想が感じられて、なんつうか、ほんとすごく良い映画だった。船長が植物を手にし、「よくここまできたなぁ」という台詞を言うシーンで、涙しました、僕は。いやはや。