東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『撮り続ける執念』

大雨と地震の昨今。今朝がた起きた地震に関しては、寝ぼけて判らなかったのが正直なところ。危機的状況回避能力が低い。


『妻の貌』を観た後、ユーロスペースを出て円山町のホテル街を歩いた。以前、その場所で見つけた喫茶店に行きたかったからなのだけど、生憎そこは休みだった。円山町は、まぁ、ラブホテルが多い。よくぞここまで建てたなと思う程にある。とはいえ当然ラブホテルだけではない。店舗もあればマンションもあり、民家もある。バーガーショップを見つけたので、そこに入って注文をし、料理がくるのを待つ。その間に、蝉の鳴く声を聞いた。大して不思議なことではないのかもしれないけれど、こんな場所でも蝉がいるのだなぁと、やけに印象に残った。


『妻の貌』はクオリティーの点でいえば決して高くはない。それでも何か拭いきれない強烈なものがそこにある。監督である川本昭人さんは、常にカメラを回している。妻であるキヨ子さんが、原爆症で苦しみ頭を押さえる映像が、ランダムにつながっているシーンがある。撮った順番と関係なく、たたみかけるように映像がつながる。若い頃のものから最近のものだと思われるものまで。膨大な記録量に圧倒される。四六時中ではないにせよ、何かの際にはカメラを持って妻の前に立ったのだろう。そして貌(かお)を撮りつづけた。
内容もさることながら、撮り続けるという行為が、映像の向こうからはっきりと現れてくる。製作に関わる苦労、努力とかそういったものではなくて、メイキングこぼれ話とかそういうものでもなくて、この作品は、撮り続けるという執念が映像として形になったものとしてあるように思える。
ドキュメンタリーにどういう括りをするとかではないけれど、この作品は、そういう点で他の作品とは異なる印象を受ける。

うーん、ドキュメンタリー映画、そういう一括りはあれだけど、面白い。『アレクセイと泉』にしても『花と兵隊』にしても『妻の貌』にしても。なんで、これほど面白いのか。なので、シアターイメージフォーラムで上映されている『精神』は、これ、もう、どうしたって観たいすわ。