東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『息もできない』

7日(金)。雨の金曜。仕事の諸々で荷物が重いのに、傘を持っているため片手に荷物集中。仕事後、久しぶりにレイトショー。
新宿武蔵野館にてヤン・イクチュン監督の『息もできない』を観る。
抑えても抑えても零れ出てしまう様な暴力。終盤、夜の漢江沿いで主人公と、女子校生が堪えきれずに涙を流すのも、ここに描かれる暴力を促す感情が、異なる姿で噴出したように思える。
カメラは被写体である人物と非常に近いところにあり、登場人物たちの表情の寄りを映し出す。それが、女子校生と町中を歩く姿をとらえるときは、非常に離れた場所からズームによってよるように映す。ここがとてもいい。音楽を流し、実際の雑踏の音は使用していない。それまで、登場人物と非常に近い距離で、ってそれはカメラをとおしてだけど、いずれにしても近い距離で物語を見ていただけに息が詰まる感じだったのが、このズームによって映し出される2人の姿を見る時に、距離が離れる感じがほっとする。それは距離的なものだけでなく、なんなのだろう、きっと街の雑踏音なども排して、単調で、それでいてすごく美しい音楽がそこに流れるからなのかもしれない。久しぶりに充実の映画体験。

中上健次『蛇淫』読了。これを読んでいたから、この映画が見たくなったというのも、ある。