東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『空からの灯りと、遠い国の歌声』

朝からやたらと暑い一日。


ソートン・ワイルダーの『わが町』を読む。経緯としてままごとの『わが星』が観たかったのに観れず、せめてもと作者の柴さんが影響を受けた『わが町』を読もうと思った次第。この戯曲が1938年に書かれたというのが驚く。
お隣同士の少年と少女に起こる極めてパーソナルな出来事を、時に宇宙くらいからの距離感でもって俯瞰するように見つめる。
『恋愛』『結婚』『死』言葉にすると、それは本当に簡単に収まってしまうのだけど、誰もがそれぞれにそれぞれの『恋愛』があり、『結婚』があり、『死』がある。そうだ、この感覚は、飛行機でとてつもない空の上から、地上の、町の、家の、それぞれの灯りを見下ろす時に感じるものに似ている。同じ様に見える灯りの一つ一つの下に、まったく別の、それぞれの『生』があって、その途方もなさに、呆然とした気持ちになる、その感覚。そんな読後感。


とあるライブを観に渋谷へ。そこでフィンランドのjoikという音楽を知る。独特の節回し。日本で言うと民謡を歌うような節回しなのだろうか。声を発することが、『歌う』以上に、唯一の楽器のようにも感じる。想像するに、かつて、人が声を、会話とは異なる形で発する時、それは『歌う』なんて生易しいものではなくて、もっとなんというか、風の音や、雨の音のような、地上にあるいろいろなものが混じり合って、一体化するための『音』だったのではないかとさえ思えてくる。