東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『ハニュウくん/物語/下北沢』

16日(日)。朝、嫁が近所の家常さんの家を雪かきすると言いだし、玄関前の雪かきを始める。家常さんには言ったのかと聞くと「メールはした」との返事。嫁と娘でスコップを持ち出し、雪をかく。僕はスコップがなかったので小さな雪だるまを作ったりしていた。娘がご機嫌な声をあげていた。と、眠そうな顔をした家常さんが扉を開けて出てきた。娘の声で起きたという。最初は、聞き覚えのある声が夢の中で聞こえたような気がしたらしい。驚いたろうな、それで目覚めたら雪かきされていたら。


その後は、一緒に雪かきをしたり枯れてしまった老木の伐採などを手伝ったり。雪解けの陽気で少し汗ばむくらいだった。それから家常さんと昼食。ある和食の店に行こうとしたら見覚えのある自転車を見つける。同じく近所に住むTくんがご飯を食べていた。偶然。その店のランチタイムが終わってしまったので、別の喫茶店でTくんも一緒にランチ。しばし雑談と食事。


17日(月)。仕事。帰宅したら娘が「ハニュウ君、ハニュウ君」と騒いでいる。何事かと思ったら、どうやらオリンピックで話題の選手らしい。オリンピック全然見てないのでわからなかったけど、娘のよくわからないフィーバーぶりに驚く。そして謎の「君」付け。


18日(火)。用事があり渋谷をウロウロする。宇田川町のハンズ裏手の歩いたことがなかった小道を行く。アップリンクの裏手あたりの道。こういう小道は愉しい。で、その辺りに行くと気になっているカレー屋があり、そこへいつも行ってみるのだけど、いつも売り切れで入れない。案の定入れなかった。しばらく歩いていると冷え込んでくる。

夜。BSで放送していた「明日に向かって撃て!」を見る。先日観た「イージーライダー」に比べると個人的には少し熱を感じないものの。ラストシーンの静止画面を観て、以前観た邦画のクライマックスを思い出す。ああ、あれは「明日に向かって撃て!」が参照先だったか。


19日(水)。仕事上でとある芝居を観劇。物語。それ自体がうまく出来ていることに感心しつつ。そして役者の人の演技について考える。足していく演技というものがあるのだとすれば、引いていく演技もあるのだろう。引くというと違うか。足さない演技というものか。そこに立っているだけでも、人は間違いなく舞台に「立って」いる。それが表現になる。足していくばかりの演技はともすると余計に思えることもあるのだろう。


そして、改めて物語りとしてのお芝居についても考える。自分は今、どういうモノを書けるのか。書くべきなのか。そんな矢先、岸田戯曲賞の選考があり、飴屋法水さんの『ブルーシート』が受賞したと知る。その戯曲はいつかきちんと読もう。観れなかったことが悔やまれるけれども。


20日(木)。猛烈な勢いで朝から仕事をこなす。それから用件があって下北沢へ。会社からだったので井の頭線で向かう。用件を済ませて、久しぶりに下北沢を歩く。路地のごちゃごちゃした感じと様々な店があるところは変わらない。ただ、以前あったと思った店が潰れている。よく見るチェーン店も目立つようになった。


そして、かつてあった小田急線の駅舎がまったく消えていた。


当然、地下化していたことは知っていた。けれども、こうもさっぱり無くなるとは。線路があったところも無くなっている。ここが何になるのか。ずいぶんと広いスペースだ。地下鉄化することでの便利はあるのだと思う。ただ、便利ばかりが良いのかとも思う。チェーン店ばかりでどこへ行っても同じようなものが買える便利は確かにある。ただ、ごちゃごちゃとした小道を歩いて、たまたま見つけた店で、見たこともない物に出会うことも、愉しい。


その後、友人のYちんとおさむしと一緒に、Tくんという友人の作った自主映画を観にトリウッドという映画館へ行く。32分の作品。好む好まざるでいえば自分が好きなジャンルではないけれど、素直にちゃんとできてるなぁと思った。内輪受け的な作品でもなかったし、安易な笑いをとるようなこともなく、Tくんの周りにいる俳優たちのキャラクターを意識して作った作品だと思えた。きちんと形にして、自主興行という形態とはいえ劇場にかけるところまで持ってきていることが本当にすごいなと思う。


改めて思い出すと、ワンシーン。主人公が道を歩いているところがあるのだけど、最初の引きの画では歩道を歩いているのだと思ったら、次の寄りの画になったとき、人物の背後を車が通過していき、道路の真ん中に立っていたことに気付き、それが個人的に面白く思えた。僕の勝手な勘違いだったのかもしれないけれど、カットがわりで急に壁を背にして歩いていると思った人物の背後に車が走ったことが、何か面白いつなぎに感じた。


上映後、少しTくんと話す。そこでうれしい報告もうけた。よかった。ちょっとしたきっかけで声をかけたとある件が、良い方向で結実していた。本当によかった。


その後、Tくんと出演していた役者たちが飲みに行ったのだけど、僕らは気後れしてしまって、おさむしとYちんの3人で居酒屋で飲むことに。くだらない話ばかりしてしまった。それが面白い。やっぱりTくんとも話をしたかったなと思ったけれど、だめだなこういう時人見知りは。話を聞くと、前日一人でTくんの映画を観に行った友人の宮嶋君はTくんと役者たちの飲み会に当然のようについていったらしい。なんて立派なんだ。いや、立派というかそれでこそ宮嶋くんというか。らしすぎるよ。