東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『オン・ザ・ロード』

tokyomoon2015-04-14

引き続き、雨が降る日々。吐息も白い。が、さすがに寒さはそれほどでもない。とはいえ、ここ一週間くらい晴れ間を見てないので早く雨はやんでほしい。


昨日、仕事で渋谷を歩き、マークシティ付近のスパゲッティ屋に入る。パスタ屋ではなく、スパゲッティ屋という形容が相応しいお店。コンセプトはわからないけれど、店内のBGMは90年代POPS。よく聴いていたからだと思うけど、イントロを聴けばなんとなくどんな曲か判る。


貧乏性ってことでもないけれど、大盛無料と書かれるとつい大盛を頼んでしまう。ステンレス製の銀の皿にナポリタン大盛。片手に持つ本はチェーホフの『三人姉妹』。店内に流れるは原田知世さんの『ロマンス』。このアンバランスさよ。


かつて大学一年生の頃、当時の部活の先輩の持っていた原田知世さんの『ロマンス』だけが録音されたカセットが流れる車で、ドライブをしたことがあった。延々と『ロマンス』が流れる軽自動車が悲鳴に近いエンジン音を出しながら、北海道の長閑な風景を走っていた記憶。『ロマンス』についてはそんな記憶しかない。


ウォルター・サレス監督『オン・ザ・ロード』。映画で描かれる青年期のようなものは僕には無かった。当然のようにあるドラックと、セックスと、酒。ドラックには当然無縁だったし、酒にも弱くすぐに紅くなって、飲み過ぎると吐いていた。映画にあるようなオープンなセックスなど当然なく、お芝居や酪農、たまに北海道をドライブするくらいの日々だった。そしてドライブのBGMはコルトレーンマイルス・デイビスではなく『ロマンス』のような90年代の音楽たち。


映画の中の若者たちは、ハイだなぁと思う。ハイばかりではないんだろうけど、映画の中ではハイな部分ばかりを切り取っていた。そのハイが終わり、ローになるわけではないけれど、ハイにはもうならないのだと決別するようなラストは、だから祭りの後のような寂寥感がある。それに比べると僕の学生生活はローだった気がするけど、ローだとあとは上がるしかないから、少しのことでもなんだか楽しいし、ローをローとして謳歌していたから、それはそれで愉しい日々だった。


昨日、帰り道。何か真っ黄色の服を着た男性が、近所のアパートのゴミ袋を漁っていた。雨の中、黙々とやっている姿に、少し驚いた。