東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『言葉から洩れる気持ち』

保坂和志さんの『季節の記憶』(中公文庫)の中に『言葉から洩れる気持ち』ということを書いている箇所がある。


『「言葉にならない気持ち」と言ってしまうと、気持ちが先にあってそれを言葉にしていくみたいなことになってしまう。みんなたいていそう思っているけれど本当は逆で、気持ちよりも先に言葉がある。恋愛なんていうのはその最たるもので、人は自分の気持ちと呼べる以前の、方向や形の定まっていない内的なエネルギーを“恋愛”という既成の形に整えていく。そういう風に人間は言語が先立つ動物のはずなのに、その言語から気持ち以前の何かが洩れているように感じることがあって(後略)』


『生物学的なものがすべていったん言語の力に還元されている』。しかしその洩れた『何か』は言葉に還元することができないものなんだと思う。その『何か』を表現しようとして音楽や絵画、様々な身体表現が生まれ、そして洩れた『何か』を言葉の中に探そうとして詩や文章が生まれたのではないか。