東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『10月12、13日』

■ 以前、芝居を一緒にやったT君からひさしぶりに電話をもらう。青山真治監督の『サッドヴァケイション』を観て、それがとても良かったとのことで電話をくれた。それでいろいろ話す。東京の通勤圏内である埼玉という場所で生まれ育った僕が、埼玉を『北九州』のような『故郷』もしくは『宿命付けられた土地』としてとらえる感覚があまりないことに改めて気付く。


それとT君からあるとても興味深い表現活動をしている劇団のことを教えてもらう。話を聞いているととても面白そう。まだまだ知らないところで刺激的な表現を行なっている人たちがいるのだと思う。


■ 詰物が取れた歯が食事のたびに痛む。それも3箇所も。しばらく放置していたのだけど、さすがにちょっと我慢できなくなってきたので、歯医者に通うことを決める。歯を見ながら歯科医の方が「5バン、シー、6バン7バン、イン・・・8バン、エフシー」と歯科助手に告げていく。何が怖いって意味がまったく判らない言葉で診断されていくことなのではないか。俺の歯の何が一体「シー」なのか。虫歯がひどい箇所がいくつかあるらしく、「キュウイーン」と削る機械で治療。この浸みてくるような痛みは自業自得によるものと、耐える。それから綿を前歯で噛みながらというえらく間抜けな格好でレントゲンを撮る。まだまだ治療初日。歯の治療はいつまで続くのか。


■ 渋谷のPARCO劇場で『犯さん哉』を観る。結局、金曜のうちに受付に電話。当日券の予約をする。当日券なのにことのほか良い席で芝居を観ることが出来た。ありがたや。劇中で多用される台詞の一つに「理屈じゃないから」があるが、まさに芝居全体を現している一語だと思った。作品を線でつなぐつもりなど毛頭なく、ぶっとく、濃い点が次々と出現してくる。第三部(正確には第三部の予告編らしいが)のラストは藤子F不二雄さんの短編『ある日、、、』を彷彿とさせる。考えてみると『理屈じゃないこと』はすでに現実でいくつも起きている。さすがにあそこで終わらせず、最終的にエンターテイメントにまとめるあたり、とても親切なつくりだと思う。役者さんのうまさ、笑いのクオリティ、ともにとてもすごく、これに不満を持つ人がいるというのが不思議なくらい。やっぱり美学を感じる。久しぶりにすかっとするほどどうでもいい芝居を観た。笑った。


中上健次さんの『鳳仙花』を読み続けている。主人公、フサのまだ幼い息子泰造の死の描写に思わずこみ上げてくるものがある。中上健次さんの文章はとても熱を帯びているように感じるのだけど、ある時は冷たくするどい。


ペドロ・アルモドバルバッド・エデュケーション』をDVDで。男だらけの作品。なのに愛いっぱい。主演のガエル・ガルシア・ベルナルが本当にきれいで、あれはおっさんも惚れるわなと思う存在感。ペドロ・アルモドバルの作品に出てくる登場人物は、ほんと誰もが『人間』くさい。『人間』くさくて美しい。