東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『虹む街』

夏みたいに気持ちが良い朝。電車を降りたら雲がもこもことして空を見るのも気持ちが良い。夏の空は高く広く感じる。コンビニで大きめのアイスコーヒーを買う。

朝から諸々仕事。メールを片づけたり。昼ご飯も食べずにいろいろと終わらせて、職場を定時であがり、急ぎ、電車に乗る。18時前後の東横線はびっくりするほど混んでいた。

みなとみらい線日本大通り駅で降りる。土地勘が無いと、出口を上がってもどっちへ行ったらいいのか方向がわからない。街の雰囲気はとても良い。が、のんびり散策している余裕はない。

神奈川芸術劇場へ行き、舞台『虹む街』の当日券に並ぶ。当日券を買う際に、住所や名前を記入する必要がある。コロナ禍の舞台観劇だなぁと思う。無事、当日券を購入した後、お腹が減ったのですぐに劇場の中に入らずに、館内でパンでも食べようかと思ったが、館内飲食厳禁だった。コロナ禍の館内だ。

上演15分前くらいに劇場内へ。横長の舞台美術。昔の時代のようにも見えて、退廃した近未来のようにも見える場末といえそうな町のコインランドリー。隣には昭和風の喫茶店や中近東の料理屋、中華料理の店などもある、長屋のような町。じっくりと眺めるだけでも飽きないほどディティールの細かい美術。コインランドリーで洗い物をしている男性が一人。雨がずっと降っている音がする。時間になると、客電が落ちて舞台が始まる。

パンフレットも読まず、できるだけ予備知識をいれずに舞台を観る。昔からそうしてきた。舞台の中心にあるコインランドリーは、その日にどうやら営業を終えて店を閉めるらしい。店主いわく「いろいろあってね」とのこと。一応、料金は取っているようだが、近所に住む人たちは同じ洗濯機にそれぞれの汚れ物をいれて、共同で洗い、すすぎ終わったら各自が持ち帰る。誰かが何か汚れたら、洗い終わったタオルを差し出す男がいる。差し出された側は、それが当たり前だとでも言わんばかりに、お礼も何もするわけでもなく、タオルを使い、使い終わったらまたそれを男に返す。その場に暮らす彼らには当たり前の日常であり、そこに余計な言葉は入らない。食べ物を当たり前のように分け合い、そこかしこで音楽が流れ、各々が日々の生活をしている。適度な距離感と、当たり前のように助け合う暮らし。気が付けば雨はやんでいた。演劇的な、劇的な、希望を抱きたい見方をすれば、雨が止むことはこれから先の幸福を予感させてもいいのだろうが、そんな予感は微塵も感じさせない。かといって絶望するかと言えばそうでもない。明日も当たり前のようにやってきそうだけど、それを受け入れて生きていく暮らし。

刺激受けるなぁ。とても面白かった。不思議と、ツァイミンリャン監督の『楽日』を観たときのような刺激を感じた。充実の90分。原作の小説本を購入。

外に出ると、肌寒いほど。半袖で出てきてしまったことを悔いた。が、せっかくみなとみらいまできたので、海へ。この時間でも人は多かった。とはいえ、渋谷みたいに、わいわいと騒ぐ人はそこまではいない。代わりに釣り人が多い。ベンチに座り、食べれなかったパンなどを食べる。海が近くにあるのは良いなぁと思う。そんなことを思いつつぼんやりする。

それから散歩しつつ。結果、横浜駅まで歩く。人はほとんどいなかった。やはり人がいないと深夜みたいに思うが、しかし、まだ23時程度。週末の夜としては寂しい。まぁ、仕方がないのだけど。そこから東横線で帰宅。