東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『西の方へ』

携帯に大学時代の同期から連絡がきた。お世話になった研究室の先生がお亡くなりになってしまったとのことで、研究室の同期でお花を送ることになり、北海道に住む同期がいろいろと動いてくれた。なかなか当時の面々と連絡を取ることもなくなり、何か連絡を取る時は、こういう冠婚葬祭のようなことばかりになってしまった。これが30代前後の時は冠婚なのだけど、ここ最近は、葬祭の方がどうしたって多くなる。そうか、先生が、か、と寂しい気持ちもあるけれど、不謹慎ではあるが、同期たちとつかの間、やりとりをできて、お互いがひとまず元気でいることを知れたことは、それはそれでホッとする。

仕事の用件もあり、とある場所へ出張。金曜朝から東海道新幹線へ乗車。コスト削減もあり、自由席で移動。ひっきりなしに走っている東海道新幹線なのに、それなりにどの便も混んでいるのだから、人の行き来というのは凄いものだと思う。

普段、東海道新幹線に乗る時は山側に座って外をぼんやり観るのが好きなのだけど、この日は海側に座る。こっちしか座れなかった。僕だけではないと思うけれど、新幹線の中のWi-Fiをきちんとつかまえることが一度もできない。仕方がないので、テザリングで仕事をしつつ。山側と違い、しばらく走ると、少し向こうに海があると思われる平坦な街並みがあり、それはそれでいい景色だなとぼんやり観る。

東京ではない、普段は行かない街に行けるのはやっぱり楽しい。なにより新鮮。そこに暮らす人にとっては当たり前の日常の中に、自分が入り込んでいるようで、どこかスパイになったような気分にもなる。同じJRでも東日本とは違う、その街のちょっとしたルールのようなものも目新しい。

で、仕事の合間の空いている時間に、以前に、もう10年以上前に行った覚えがある海岸に行ってみた。あの時は、友人を訪ねてでかけて、友人が仕事だったので朝いったん友人とわかれて空いた時間にその海岸に一人で行き、真っ黒に日焼けにして夕方にその友人と会って、びっくりされた記憶があった。

おぼろげな記憶で、最寄りと思われる駅からおりて、その海岸に行ったけれど、まったく記憶になかった。砂浜もあったと思うけれど、僕がずっと前に行ったときは、ちょっとした防波堤のようなところでゴロゴロ転がって本を読んだ覚えがあったのだけど、そんな防波堤がそもそも無い。ではかつての俺は一体どこで、真っ黒に日焼けをしたのだろうか。不思議が。

もう夏は終わって、泳ぐ人はもちろん誰もいないけれど、その砂浜は地元の人たちや遊びに来る人たちで賑わっていて、それぞれがのんびりと砂浜に座ったりしている。空の雲はまだ高く、だけど、真夏とは違って、陽を遮るともう寒いくらい。

仕事もあってきているものの、こういう時間を持てるのも有難い。諸々おえて日曜の夕方。新幹線を待ってホームにいる。西日が眩しく、ゆっくりと陽が沈んでいく。東京方面とは反対側、当たり前だけど、博多方面の線路のその先が、黄金色に輝いている。ああ、日本も広いなぁと思う。もっと西の方にも行きたい、東京に帰りたくないなぁとおもうが、それが許されるわけもない。

諸々終えて、帰路につく新幹線は、もうずっと寝ていた。3時間くらいあっという間に経って、体感ではほんと束の間で品川へ。山手線に乗り換えると、一気に現実感が出てきた。