東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『氷の上を金具をつけて動く』

娘子は、『ピングー』を観たい時に、「もっとピングーちょうだーい」と言う。それがどうやら口癖になっているようで、バナナやみかんを食べ、そして食べきってお代わりが欲しい時に「もっとみかんちょうだーい」と言うべき場所でも「もっとピングーちょうだーい」と言ってしまうことがある。「もっと」とくると自然に「ピングー」が来てしまう。そんな口癖を持つ我が娘子1歳9ヶ月。


少しだけ『笑っていいとも増刊号』を観ていたら、真矢みきさんがテレフォンショッキングに出ていて、そのトークがやけに面白かった。自分の顔が嫌いらしく「この顔、今日置いて行くんでどうぞ持って帰って下さい」と言ったり、地形を見ることが好きらしく、飛行機に乗るとずっと窓の外を見ているらしく、そして、泣くらしい。

『地形で泣く』

そんな人もいる。で、オリンピック観戦(というかスポーツ)も好きらしいのだけどフィギュアスケートのことを「氷の上を、金具を付けた靴で、あんな、恐ろしい」と言い、そこで思わず笑ってしまう。なにせ、語っている当人の真面目さよ。



山上たつひこ/いがらしみきお 『羊の木』が面白い。面白いという言葉は的確じゃないかもしれないけど、目を離せくなる。ページをめくるのが気が重くなるのだけど、目を離せない。

人は様々な学び、経験を経て自分の中に『正しさ』を培って、それを軸に生きている。その『正しさ』がぶつかりあうことがコミュニケーションだと思う。そうして、人との付き合い方、距離をとる。ただ、『正しさ』と一緒に皮膚感覚っていうのもある。別の言い方だと生理的なもの。その人と合う合わないという感覚。

この作品は、人を『善』と『悪』で区分するのではなく、それぞれの『正しさ』と皮膚感覚で以て人と人が接することを描く。人の手によって作られた法律を犯し、罰せられた罪人が、刑期つまり罪をつぐなって出所した後に、一つの町に集められる。この時点で、『悪』ではなくなった彼らとの共存が可能かということを描いている。1巻では、町の世話人となる3人の人物と11人の元受刑者との関係が中心になっている。つまり、秘密を知る関係者たちの姿が中心となる。とてつもなくページをめくることに力がいる。


で、たまたま読み返していた松田正隆さんの戯曲『クリプトグラフ』の後書の言葉が、この作品の一部分を的確に表しているように思えた。

秘密はまったく理解できない他者の言語で書かれている。秘密を抱えるということは他者の領土を飛び地のように自らの身体に置くことだ。


そして、その秘密に人は耐えうるのかを問いかける。


はっきりしない天気でぼんやりしていたら、今日も外に出なかった。よくない。

羊の木(1) (イブニングKC)

羊の木(1) (イブニングKC)