東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『天安門、恋人たち』

朝、目が覚めたら9時過ぎ。寝すぎてしまった。もたもたと起きだして、朝食を食べて、少し掃除機もかける。それから渋谷へ出かける。先日治療をした奥歯の詰め物をいれる。11時半からの予約だったけれど、少し早く入ったら、すぐに通してくれた。

「ちょっと痛むかもしれませんが」と説明をしてくれて、治療が始まったけれど、猛烈に痛い。ギリギリ叫びそうになるほどの痛さ。ただ、歯科医の方は『当たり前です』みたいに治療を続けるので、「やめてくれ」とも言えず、耐える。「歯茎が上がってなかったので大丈夫でした」と言われるが、そもそも『歯茎が上がっている』状態がどういうことかもよくわからない。ジンジンと痛むのをこらえつつ、支払い。「次回の定期健診は10月です」と言われる。3か月後。もう暑い季節もひと段落している頃か。それにしても微妙に先の予約を今の段階でいれるというのが、なんだか、日々、先の見えない生活をしているだけに何とも言えない。冗談抜きで、その時まで、生きてるのかもよくわからない。

早く治療が終わった。時計をみると11時半過ぎ。思い立って近くにあったLOOPに乗って目黒駅方面へ。日は高く日差しは強いが、夏らしい暑さで心地いい。目黒シネマでやっている『ロウ・イエ特集』で、12時5分から『天安門、恋人たち』をやっていた。観たいなぁと思っていたので、歯医者が早く終わってよかった。劇場はほぼ満席。目黒シネマのシートはとても座りやすい。

1980年代初頭。大学に通い始める主人公たち。彼らの住む部屋が、4人一部屋で、二段ベッドが二つ置いてあり、そこがそれぞれの寝床かつ空間のようになっている。一応、ドアはあるが、そこに暮らす学生たちは自由に出入りしている。その作りが、いわゆる学生寮の作り。自分がかつて通っていた大学でも、そのような寮に住んでいて、その空気感が一気によみがえってきた。

このロケ地が実際の学生寮を使ったものなのか、撮影のために作りこんだ場所なのか、そして学生寮に暮らす若者たちがどこまで仕込みの役者たちなのか。あまりにもリアリティがある。映画用の、その日その日雇われるエキストラの場合、どうしても、どこかに仕込まれた演技のようなものが透けて見えることがある。画角の中で、エキストラの配置や動きの指導は、日本だと助監督が作る。果たして、この作品は誰が指示をだしていたのだろうか。慌ただしく動く学生たち、そして注目を集めるカップルである主人公たちが通りを歩くと、それを珍しい生き物を観るように眺める目線のやり方。男子寮に女子生徒が歩いている背後の学生たちが、卑猥な想像をしながら彼女を見る姿も、学生寮の空気感が凄く出ている。そういった日常の画作りがしっかりできているからこそ、中盤のクライマックスである天安門事件で衝動的に車に乗り込む若者たちの悲劇的な夜の混乱も凄みが出る。その場に、主人公たちと一緒にカメラも放り込まれたような混乱。そして、敗北。


劇中の彼らの選択が、何かの理由があるのかどうか、そういうことはこの際、いったん、棚に上げて良いのだと思う。ひとまず走り出す、そこで何かにぶつかりそうになり、咄嗟に、よけてみたり、あるいはぶつかってみたり、道を外れて走りだしたり、立ち止まったり。そうやって行動が積み重なっていく。そのありのままを切り取っていく。

映画館を出て、一息。陽はまだまだ高く暑いけれど、映画館のエアコンですっかり身体が冷えて、しばらく、その暑さが心地良い。山手線で新宿へ行き、新宿御苑へ。空調のある場所に行きたくなく、木陰のベンチで読書。柚木麻子さんの「BUTTER」。

風が吹くと心地よく、木々がゆらゆらと揺れている。日差しが直射であたる芝生の上は、蜻蛉がやたらと周遊していて、それらの羽が光りに当たるのか、空気がキラキラと光っているように見える。心地いい夏の夕暮れ。閉園時間までそこで読書をしてから、地元のベローチェに移動し、少し仕事をしたり、引き続き、読書をする。

21時、閉店と共に店を出て、買い物をして帰路。見上げるととてもまん丸の満月。立派だなとぼんやり眺める。家に着いて遅めの夕飯を食べて、この日は筋トレもせずに就寝。