東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『青春デンデケデケデケ』

Instagramをフォローしているkinoigluの有坂さんが目黒シネマでやっていた大林宣彦監督特集の紹介をしており、それが『HOUSE』と『青春デンデケデケデケ』の二本立てであることを知り、これはと思い立つ。なんといっても『青春デンデケデケデケ』。原作も大好きだけど、映画もとても好きで、DVDでしか観たことがなかったので、いつか映画館で観たいと思っていた。

 

朝から出先での仕事が続くも、なんとかギリギリでいろいろ終わらせて、ここで逃したらいつ観れるかわからんと思い、目黒へ。目黒シネマ自体も一度行っておきたい映画館だったし。

 

久しぶりに観る『青春デンデケデケデケ』。複数台の16mmフィルムカメラを同時に回して撮影し、そのフィルムを非常にテンポよく繋ぐ前半。そのテンポが青春の躍動のように感じられる。四国の方言言葉で、ぼそぼそとテンポよくしゃべるため、何を言っているかわからないのだけれども、映画は観客のことなど気にも留めずに勢いよく進み、ロックに夢中の若者たちは高校生活3年間をバンドの日々に費やす。地方の片田舎に住む少年たちのゴールは、自分たちの通う学校の文化祭でのライブであり、そこにドラマチックな展開があるわけではなく、彼らは文化祭が終わると各々の進路へ向かいある者は学び、あるものは家業を継ぐ。そのなんてことない日常。彼らにとってそこにバンドがあった。ただ、バンドがあった。ただ、バンドがあった、そのなんてことなさを描いてくれているからこそ、この作品は普遍的だと思う。目まぐるしいほどテンポのいいカット割りだったけれど、バンドの活動を終えて、それぞれの進路を目指すクライマックス、主人公が想い出の地を歩く場面は、そのつなぎがとても緩やかになり、家に戻った主人公を待っていたバンドメンバーと、海の防波堤の前で語らう場面はワンカットで描かれる。友人たちは学生服を身にまとうが、東京の大学を受験する主人公は白いロングコートを羽織っている。彼は3年間の日々を終えて、新しいスタートを迎える。だからこそ白をまとう。

 

大林宣彦監督の少し気恥ずかしくなるような演出はこの作品でもあるのだけれども、不思議とそれが嫌ではない。それどころか、観終わるころには、その気恥ずかしさもなんだか甘い記憶のように愛おしい。

 

普段は買わないパンフレット。映画上映当時のパンフレットが在庫分だけ販売されていたので、つい購入してしまった。

 

それにしても、『青春デンデケデケデケ』。本当に素敵な映画。