東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

千鳥日記『ふたたび、朝の富士』

■ ここ数日更新が滞っていた。それも特に深い理由はない。パソコンに向かえる機会がなかったからだ。かといってパソコンに向かえる時間がまったくなかったのかといえば、そうではないけれど、ちょっと空いた時間に集中して書く気が起きなかったということもあるにはある。

■ それでも普通に過ごしていた。仕事をしたり、稽古に行ったり。腹が減ったら飯を食い、夜になったらそれなりに寝て、可笑しなことがあったら笑って、普通の顔して生活していた。

■ 夜勤明けの水曜は、日中にチラシの折込で駒場東大前にある劇場に行ったが、稽古は休ませてもらった。それで悶々としていた状況にある程度決着をつける。抱えていた問題に解決はないが、とにかく先へ進むしかない。自分が思う先へ進む。

■ 木曜日は仕事後に稽古。正直、気が乗らなかったのだけれどもこの日の稽古に出て少し救われた。Oさんが書いた短編の稽古をやったのだけれども、この短編に僕は出ていない。男優のUさんと女優のYさんの2人しかでない短編なのだけれども、これがいい雰囲気だ。特にUさんはとてもいい。持っている雰囲気が良いんだと思う。Uさんは35歳くらいだ。それでも年齢に比べたらずっと若く見えるんだけど、やはり僕なんかよりはずっと落ち着いた大人の雰囲気を持っている。それがこの短編とよく合っている。この短編だけはOさんの希望で笑いとは違うものをやりたいとのことなんだけど、見ていてとてもいい。欲を言えばもっとゆっくりやってもいいなぁと思うんだけど、それはきっと僕の好みになってしまうから、そこは演出であるOさんの考えを尊重。僕はこの日の稽古はその短編をただ見ているだけだったのだけれども、それでもその雰囲気にとても救われた。この芝居に関してもがんばってやりたい。全力を尽くしたい。

■ 昨日の夜、仕事場の同僚が仕事を辞めることになり、その送別会を開いた。僕はその方とは同じ仕事場ではなく、電話でやり取りすることが大半だったけれども、それでもとてもお世話になっていた。仕事を辞める理由は詳しくは知らないけれど、派遣社員期間の任期満了というのが主な理由なんだと思う。僕も同じ契約社員なのだけれども、この派遣会社のルールに、派遣先の仕事の期間が3年間というのがある。つまり僕も3年働いたら問答無用で今の仕事を辞めることになる。派遣会社に登録しておくことは引き続きできるが、かといってすぐ次の仕事を回されるとは限らない。この辺もまぁ正社員との決定的な違いといえば、違いなのかもしれない。

■ そういったわけで、僕の周りでは職場の人の入れ替わりがよくある。同じように派遣社員の同僚もそれぞれ、そういった立場であることにいろいろ思うことはあるのだと思う。まぁそういうことを抜きに昨日は楽しく飲んだ。終電は気にしなかった。結局朝まで飲んで、僕はそのまま職場に来ている。ちょっとは寝たけど、やはりしんどい。明け方、一緒に働いている職場の方が酔った勢いで僕にいろいろ言ってきた。その意見はきっと正しい。きっとその方も酔った勢いじゃないと言えない様なことだったのかもしれないし、それが間違っているとか悪いとかとも思わず、それも一つの意見なんだと自覚する。

■ 朝5時。始発が動き出した山手線のホームに立つ。まだ寒い。僕達と同じように金曜の夜を楽しんだ人たちが、家路に帰ろうとしているのかホームには人が多かった。楽しい夜を過ごした人たちがシートで眠っている電車内はとても静かだった。僕は仕事場へ向う。真冬のように寒い朝。車の走らない道路。人気のないビル。朝焼けが東京湾の向こうに広がってとても奇麗だった。ビルの合間から富士山が見えた。富士山のふもとまではっきりと見えた。よく見るとどこかの山脈がビルの向こうに地平線を囲うように見えている。こんなにはっきり見えたのは初めてだ。まだ乾燥して寒いから、遠くまではっきり見えたのだろう。やがて春がくれば、大気にも湿気が多くなり、蒸発する水蒸気のせいで遠くの視界が遮られる。そうなると富士山は見えなくなる。寒い季節だけ見える視界。もうすぐ富士山は東京から姿を消すだろう。そして桜が咲く。春が来る。

■ とにかく前に進む。遊んでいると思われても構わない。必死で遊んでいるのだから。必死で考えているのだから。夢に向かって生きているなんてカッコいいことを思ってはいない。好き勝手に生きているだけだから。必死に考える。楽しく過ごす。いろいろあるけれど、はっきりといえるのは本当に毎日が楽しい。そう思う。