東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『無』

26日(土)。いろいろとお世話になっているTさんと、お亡くなりになってしまったTさんのご主人さんのお墓参りに行く約束をしていた。本当は家族で行かせてもらう約束をしていたのだけど、起きたら娘の体調が悪く、嫁と留守番をすることにして、僕だけが行くことになった。


電車に乗って鎌倉へ。鎌倉へ行くのは久しぶり。いつ以来だろうか。しかも電車で行くというのは初めてのような気がする。時間がかかるかと思ったけど、それほどでもなかった。本を読んでいたら気がついたら着いた。駅を降りて、鎌倉に来ている人の多さに驚いた。観光の人、多過ぎ。考えてみたら、土曜だし、いわゆる大型連休の初日でもあるわけで、そういうこともあったのかもしれない。Tさんと合流して、バスに乗る。それで鎌倉霊園という場所へ。いわゆる共同墓地なのだけど、その敷地面積が途方もないほどでかい。なにせ霊園の中を巡回バスが走っている。見上げると、小高い丘の上の方までお墓があり、上の方はさぞかし見晴らしが良いのだろうなと思ったら、Tさんのご主人のお墓はまさにその丘の上の方にあり、そこまで歩くことになった。


鎌倉は土地としても山のようになっているようで、この霊園はその山の一画にでかでかとあるようだった。お花を代えて、お線香をあげる。どら焼きを供える。そこで一息つく。風が気持ち良い。そして見晴らしが良い。冬場は富士山も見えるという。なんていう鳥なんだろうか、2羽の鳥が空を気持ち良さそうに旋回していた。Tさんのご主人さん自身がお墓の石をこだわって選んだのだと言う。その石は白く丸い石で、なにごとも一気にやりたがったTさんのご主人はその重い石を一気に持ち運ぼうとしたそうだ。そんな光景が思い浮かぶ。Tさんのご主人はとてもおおらかで、真面目な性格の方だったけど、犬や猫など動物がすごく好きで、僕らが大事にしていた猫や犬のこともすごくかわいがってくれた。今は、山形の嫁の実家にいるバーニーズマウンテンドッグを生後数ヶ月だけ飼っていたときがあり、嫁とTさんのご主人で散歩に連れて行ったことがある。いくら待っても帰ってこず、心配になったTさんが連絡をしてみると、散歩に夢中でやけに遠くまで歩いていたらしい。そんなことを思い出しながら、Tさんと鎌倉駅前で食事をした。懐かしい。そして、懐かしいと思えるほど時間が過ぎてしまっていることに驚く。


それからTさんと別れて、僕は一人鎌倉駅から北鎌倉に向かって散策。なんとなく線路沿いを歩く。北鎌倉に行く手前でかなり急な坂道を歩く。岩肌がむき出しになっていて、かつてこの場所を切り通して道にしたことが想像できて、そんなことをした先達の方々がいるのだと驚く。鎌倉の町並みはなんだか良い。なんというか、落ち着いた佇まいというか、山が多く、地形も入り組んでいて決してなだらかな土地ではない。そういう場所だからこそ、近代化されえない感じがあって、主要道路でさえもバスで走るととてもせまく感じるような道幅の道路とか、車さえも通れない細い路地があるところとか、そういう場所を歩くと面白く感じる。


北鎌倉まで歩いて、円覚寺へ向かった。せっかくなので、小津安二郎監督のお墓に行こうと思った。ヴィム・ヴェンダース監督の『東京画』で、笠智衆さんがお墓参りをしているシーンを見たことがあった。『無』の一文字が彫られた墓石。それを見たいと思った。円覚寺自体がとても広いお寺で、まぁお墓なので観光地にするわけにもいかないのだろう。特に案内表示がされているわけではなく、携帯で調べた情報を頼りに探す。それでお墓を見つけた。当然なのだろうが、お墓はひっそりとあった。『無』の文字。そしてお酒がたくさんお供えされてあった。言葉も出ずに、その場でしばし立ち尽くす。で、手を合わせて目を閉じる。何か祈ったということもなく、ただ、手を合わせた。近くで工事をしていて、その音がずっとしていた。


夕方から仕事があったので、北鎌倉から電車に乗る。駅のホームで喉がなんとなく痛いなと感じる。で、夜になって寒気でてきた。家に帰ると熱っぽく、とにかく辛いものを食べて熱をあげようとしてラーメン等にやたらと辛くする。少し汗はかくものの、しかし体調は悪くなるばかり。倒れるように休む。


27日(日)。起きたらやはり体調が悪い。せっかくの日曜だけど、家族三人家でおとなしく過ごす。娘も鼻水が止まらない様子。外は晴れていて風も気持ち良さそうだったけど、残念。自業自得。昼食後、昼寝をしたのだけど、夕方にもウトウトする。そして夕食後にも眠くなって21時前には眠ってしまった。


夢を見た。自分にしては珍しくその夢を覚えている。二人の登場人物が出てくる。一人はかつて舞台を一緒に作った友人で、もう一人は知らないだれか。その二人と芝居を作ることになり、その台本を決めるという設定らしい。二人がそれぞれ興味のある台本を推すのだけれど、対立しているのか決まる気配がない。そんな中、僕は揉める二人の間に入り、二人の推す台本を組み合わせて二つの芝居なのだけど一つの舞台に上げれないかと思案している、という夢。別にうなされるような話ではないのだけれど、朝起きると、嫁から僕がうなされているような声をあげていたと言われる。そしてイビキがうるさかった、とも言われた。なぜうなされていたのか、そしてどうしてこの夢だけちゃんと覚えていたのか自分でもよく判らない。


今日は今日でゴールデンウィーク前なので仕事がバタバタと駆け込んできた。それをいろいろ終えると21時をまわっていた。それから家に帰る。体調がまだ回復しているってわけではないからということもあるのだろうけど、夜はまだまだ寒い、気がする。日中との温度変化にやられ気味。