東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『正月の3日間』

tokyomoon2017-01-10

2017年は無事に開けていた。無事というのも変な書き方だけど、穏やかな新年だった。

嫁と娘は山形の実家へ帰省し、僕は4匹の猫と過ごした。1日は嫁たちを東京駅まで送り出し、その足でどうしたものかと新宿をウロウロして、思い立って『この世界の片隅に』を観ようとテアトル新宿に行く。が、すでに満席のアナウンス。残念な気持ちを抱えつつ、歌舞伎町の東宝シネマズで『ローグ・ワン』を観ることにする。やけに混んでいたのだけど、チケット購入の際に1100円で映画の日だと気づく。そうか元旦はそうなのかと当然のことを思いつつも、映画の日がいつの間にか100円値上がりしていることに驚く。


『ローグ・ワン』は面白かった。エピソード4の前日譚というあらかじめ決められた筋書きの中で、戦争を大きな物語で描くのではなく、一反乱軍の兵士の戦いとして、今の時代でないと描けない戦争の姿を描いているように思えた。


それから喫茶店『西武』へ。パソコンで年始の挨拶など作業。さすがの『西武』も空いていた。


翌日、2日。渋谷のユーロスペースで『この世界の片隅に』が公開されると知り、すわ、とでかける。これまで何度満席の告知で泣かされたか。年寄りには立ち見は辛い。座ってゆっくり観たい。で、意気込んで朝の回を観に行くと、ユーロスペースは意外なほど空いていた。肩透かし。幸運だったのはこの日がユーロスペースの年始初日の営業ということで、映画が1100円だった。映画の日の振替があるという幸福。繰り返すけど100円の値上がりは気になるが。


やはり『この世界の片隅に』は良かった。こうの史代さんの優しいタッチの作画がそのまま動き出したような動画。戦前の幸福な日常から、戦中へ。それでも毎日は穏やかさもあったが、穏やかな日々と戦争の緊張感がシーソーのように揺れて、次第にその揺れが激しくなってしがみつくことさえもできなくなる。そんな中で、ふとした穏やかな日々の描写が優しく、だから余計に空爆や人の死、そして原爆の描写には胸がつまる。失ったものは多かった。それでも生きている喜びがある、なんて部外者の僕には言えない。簡単には言えない。だけど、作中で穏やかな夜が戻る描写で終わるラストにはやはりホッとする。


その後は、安定の『西武』。パソコンで嫁から頼まれている動画の編集。なかなか終わらない。


3日。思い立ってでかけたいと考える。最初は鎌倉、とか、海、とか思案したけれど、あまり遠いと大変かと思い、都内を散歩しようと都電に乗る。なんとなく町屋で降りて、適当に歩く。普段通らない尾久駅のあたりなど新鮮。不思議なことに、JRの高架の下を別の線路が走っていて、これはなんの線なんだろうと思う。日暮里駅まで歩き、急な階段を上ると谷中霊園。急にかなりの高さになる。かつてはその線路による境目に何か住居環境の違いもあったのかもしれないけれど、今では低い土地の側にもタワーマンションが建っていて、谷中の高さに負けじとアピールしているところもある。谷中霊園の中に徳川慶喜の墓がありそこへ行ってみたり。それから上野桜木町のあたりの寺町を散策して、東大の方に向かい、本郷から御茶ノ水へ。この辺りで、たくさんの勾配を歩き、正直いうとヘトヘトになっていた。そもそも目的はなかったけど、これはなんのために歩いているのかと呆然とする。神保町までたどり着き、岩波ホールオタール・イオセリアーニの新作『みなさま、ごきげんよう』を観る。カメラのサイズに意志がある。悲劇も引きで撮ると喜劇になる。イオセリアーニらしい作品。それから、都営線新宿三丁目へ移動(さすがに)。安定の『西武』でいくつか作業。そうやって三が日は過ぎていった。