東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『その場所の速度』

8月の頭、3日ほど、とある仕事でとある地方の島へ行っていた。本州からフェリーで15分程度。風を受けながらそこそこのスピードで移動。陽射しは強いけど、甲板にでると風を受けるので気持ちいい。普段、行く機会のない離島に行かせてもらえるというのは有難いことだ。もちろん、仕事で行っているので何をできるわけでもないけれど、なんというか少しだけでもその島の長閑な雰囲気に触れることができると、どれほど普段の自分の生活と、リズムが違うのかということがわかるような気がする。年配の方々は、軒先の日陰の場所に腰をおろして談笑している。見知らぬ僕らが通り過ぎると「こんにちは」と笑顔を向けてくれる。違反ではあるのだろうが、島でスクーターに乗る人たちは、ヘルメットをしていない人たちがちらほら見える。そういった緩さも島の持つ持ち味というか、なんというか。あと、気になったのはそれぞれの家の玄関先に見慣れぬしめ縄があったこと。こんな時期にしめ縄が飾ってあるのも気になったので、後で調べてみると、島というか、その島も含めた県の特徴で、1年中、しめ縄を飾る風習があるのだという。

 

こういう場所にくると、海ばかり眺めてしまう。朝も昼も。そして夜も。仕事が一区切りついて、夜21時頃に、近くの砂浜まで散歩した。この時間になると本当に人影もまばらで、夜に出歩いていることに少しばかり気が引けるような気持にさえなる。砂浜では2組ほど、花火をしている人たちもいた。そのうちの一組は家族連れ。花火が終わると、手をつないで帰って行った。向こうの方では夜釣りをしている人がいる。釣りに詳しくないので、なにを釣っているのかはわからない。ポッ、シュー、と花火の音がする。もう一組は若い人たちが遊んでいる様子。暗いのでおぼろげな輪郭と、声しかわからないので、たぶん、なのだけど。風が気持ちいい。波の音がする。空を見上げれば、星が見える。周りにもいくつか島が点在していて、向こうの方にもポツポツと灯りが見える。ここで暮らす人たちがいて、その人たちには、その人たちなりの生活と、愉しさと、苦労があるのだろうなぁと思う。都会と、こういう暮らしと、どちらが良いとか悪いとかではなく、自分が置かれた環境の中で、生きていくうえでのアレコレがある。当たり前のように、過疎化というか、若い人たちの流出という話を耳にするが、そうではあっても、真っ黒に日焼けした地元の子供たちが楽しそうに駆けずり回っているのを目撃もするし、日ごろの仕事で鍛え上げられた身体で、漁の仕事をしている若い男性の姿も見たりする。

 

炎天下の中、一人のおばあちゃんがゆっくりと歩いている姿を見た。この方の、速度なのだなぁと思った。思わず写真を撮ってしまった。

 

わずか数日ではあったけれど、こういうところに行ける機会というのは、とても恵まれている。

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