東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

A管理人はいつも死んでいた

7月も最終週だ。
思えば7月は自主映画の撮影から始まり、その作品を編集して、31日にその作品を結婚する先輩に手渡すことで終わる。作品はとりあえず完成。編集からVHSに落とす作業で手間取ったのは、単純に飽きたから。中旬にも書いたけど、やはりムービーメーカーは家庭用編集ソフトだ。どうしても「もう一つ」が足りない。ただそこで欲をだすには、お金が必要で、で、そこまでするほど編集とかに興味があるのかといえば、そうでもない自分がいる。

ただ心残りといえば、1カット付け加えなかったこと。やっぱり蝉が鳴いている風景を入れておきたかったかもしれない。今ならフラフラ散歩しているとどこでも蝉が鳴いている。夏っぽさ云々よりも、そういうシーンを挿入することで、また作品の空気感が変わる気がする。そう思うなら、追加で入れればいいんだけど、もう億劫だ。この前も書いたけど、今の僕は上の空だ。リーディング公演のことをいつもぼんやり考えている。上の空だっただけに読み返してみると、この前の日記は誤字もひどいことになっている。我ながら情けない。

土曜日に大友克洋監督の「スチームボーイ」を見た。今年の夏の映画で僕が一番見たかったのはコレだ。だって構想9年でしょ。制作費だって20億。なんだかそういったことがすでにすごいことになっている。で、見てどうだったかなというと「冒険活劇」だった。「AKIRA」を見たとき興奮したのは、綿密に描かれた都心の超高層ビルディングがめちゃくちゃに破壊されているところで、それはやはり80年代の高度成長期の日本において、その礎になってきたはずのビル群が映画の中でいとも簡単に崩壊していくという、その感じにしびれた。壊れるはずがないものが、得体の知れない力で崩壊していく。その世界は、そんなことは想像できない暮らしをしていたバブル期の僕にとって刺激的だった。で、「スチームボーイ」。やはり最後は都市の破壊だ。ロンドンの街がいろいろ破壊されていく。でも、ここに「AKIRA」で感じた興奮はなかった。すでに日本はバブルがはじけてなんだかいろいろ崩壊している。で、湾岸戦争がテレビで報道されて、戦争をテレビでみることになった。今度のイラクの戦争では実際に日本人にも犠牲者がでたり、自衛隊が派遣されていたりと、また少しづつ状況が変わっている。もはやバブル期とは別の世界になっている。きっと「崩壊」を見ることで刺激になる時代はもう終わった。2004年の今、僕が見たいのは「破壊」の次に来るもの。それはやはり「再生」だ。一つの大きな完結から始まる一歩を描くこと。そういう場にいる人間の姿を捉えることが「イマ」という時代に必要なんじゃないのか。

そんなことを考えながら、昨日の夜、9月の展覧会の打ち合わせで東京へ。今回の展覧会を作るのは総勢5名。それぞれがいろいろな出し物を展覧会で発表する。で、僕はリーディングというわけ。骨組みを徐々に決めていく。展覧会期は1週間だけど、リーディングはそのうち2日に1回づつやる。それにしてもこの展覧会のリーダーMさんは毎日新聞の長野支局にいる人だ。だから打ち合わせの度に長野から東京に新幹線でやってくる。その情熱は何事だ。趣味に新幹線を使って馳せ参じるってなかなかできないことだよ。ちなみにMさん曰く「白骨温泉の件は長野では大問題になっているよ」とのこと。長野でも有数の観光地の失態でキャンセルが相次いでいるそうだ。なんでもその温泉地で一番でかいホテルが「うちは入浴剤はいれてない」と嘘をついたらしい。で、もちろん調査をしてすぐにばれた。次に彼らは「1回しか使ってない」と言い、これも調べたら、実は5年間使っていたと即座にバレたらしい。子供だ。これは子供の嘘だ。なんてつまらない嘘をつくんだ。こんなしょうもないことでいろいろと失ってしまうことになるのは本当に間抜けだ。何かが歪んでいる。

とりあえず、諸々打ち合わせたけど、僕のリーディングはタイトルしか報告できない。そしたら、タイトルをくれたIさんがそのタイトルの曲を作ったと笑顔で言ってきた。「松瀬君はまだなのか」と言われたけど、まだです。それにしてもアグレッシブというか、なんて早さだ。こっちがまだ役者が4人か5人かもはっきりしないで、ぼんやりしている間に、曲を作ってしまうって、だいたいその曲をどうする気なのだろうか。芝居で使えといいだすのだろうか。それはまたどうしたものか。

で、打ち合わせ終了後、家に帰る間に、気になっていた31日の結婚式パーティーの余興の進行具合を聞くためA管理人とKにメール。まだ全然進展してないらしい。映像担当のA管理人にまだKから写真や素材が届いてないらしい。Kは何をやっているのだろうか。もう4日しかないのに。こうなるとますますA管理人が死ぬことになる。思えばA管理人は何かするたびに徹夜ばかりしていた。芝居をやるといえば音響の編集や映像の編集を頼み、そのたびに彼は死ぬ。学館で死ぬし、合宿所でも死ぬし、寮でも死んでいた。徹夜を続けることで、授業にも出なくなるし、顔色も蒼くなるし、髭もすごく伸びていた。いろいろ申し訳ないとは思ったけれども、それでも彼にしかできない技術があり、僕はそれゆえに彼に頼みごとをし続けた。そのたびに彼は死んでいたが、そのかわり良い仕事をしてくれた。今回はA管理人がなるべく死なないように早めにいろいろ頼もうと思ったけど、今回もどうやらA管理人は死んでしまうみたいだ。やはり作る人たちが全然違うところに住んでいる弊害がでてきた。残りはあとわずか。僕に出来ることはせいぜい無事完成することを祈ることだけだ。A管理人もKも、31日までにおそらく2回は死ぬだろう。しかし大丈夫、君らの精神力の強さは大学時代からよく知っている。2回くらい死んでも、まぁ、大丈夫だ。埼玉から健闘と健康を祈っている。