東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『選挙について』

■ Tシャツだけだと肌寒く感じる昨日今日だ。こういう季節の変わり目は決まって体調を崩す傾向にあるので、気合をいれていかなくてはならない。風邪引いている場合じゃない。


尾田栄一郎さんの『ワンピース』の最近のコミックを一気に読んでいる。いわずと知れた漫画だと思うけど、最近の物語に出てくる「CP9」や世界政府って自分が貫く正義の為に殺人が許可されているとか、『歴史の本文(ポーネグリフ)』に書かれた古代兵器を『正義の兵器として使うために』自分たちの手中に収めようとするところとか、自分たちが信じる正義で力づくで世界を支配しようとするあたりこれ実世界のアメリカじゃないか。空島編の聖域と見なす土地の奪い合い問題から生じる2項対立の図式だって、パレスチナ問題とかぶってみえるし。無論、それらは勝手なこじつけで、そういうこと抜きにワンピースは面白いと思うけど、勧善懲悪といった判り易さとは違う、お互いが自分の正義を貫くための戦いを描いている点で、ワンピースはとても優れていると思う。


■ 話は変わる。こういった喩えが適当かどうか判らないまま、とりあえず喩えますが、野球の試合があったとする。巨人対阪神とでもしておこう。実際に試合を見ずに結果だけ人から聞いてみて、「やはり阪神がめっちゃ強かったよ」と言われたとする。で、ああそうか、やっぱり今は阪神が強いもんな、で、巨人は外野がいろいろな問題でうるさいことになってるし、やっぱり駄目なんだよとか思ってみたりする。


■ ところが、試合の結果を見ると9−8で、阪神が9回になんとか勝ち越しをして、その裏、巨人も2アウト満塁のチャンスまでこぎつけながら惜しくも負けたというのが実際だとしたら。無論、最終回のふんばりをみて「阪神がめっちゃ強い」と言う人もいるだろうが、どちらの力もそれほど変わらなかったともいえなくもない。いずれにせよ見解は人によって変わってくる状況だと言えると思う。


■ で、今回の衆議院選はこういう状況だったんじゃないのか。僕は嫌気がさしていたので11日の開票日に選挙特番は一切見ず、翌朝、報道されていた選挙結果の「自民圧勝」という見出しだけを見てもういいやと見るのを放棄していた。最近やっと冷静に振り返ってみようかなと思い、色々見ているのだけど、そうすると「自民圧勝」という言葉に疑問が出てくる。


■ 埼玉県の比例区選挙の投票結果は自民党139万3501票(得票率38.53%)で民主党114万2545票(得票率31・59%)だ。また小選挙区では僕の選挙区は自民党候補者が10万3588票で、民主党候補者が10万4182票で、民主党候補が勝っている。首都圏の中で他の県に比べて埼玉は民主党ががんばった都市なのでそういう見方もできるのかもいしれないが、人によって見解は変わってくるような結果で少なくともマスコミがあれほど騒ぐような「自民圧勝」ではないと思う。僕は「自民圧勝」という言葉だけを鵜呑みにしててっきりものすごい数の得票率を自民党が取っていたのかと思ったけどそういうわけではなさそうだ。(ところで、埼玉県選挙管理委員会のホームページに掲載されている埼玉選管のマスコットである選挙くんは何度見てもまったくかわいくないと思うのだけど、どうして彼がマスコットに選ばれたのだろうか)


■ 今回のような結果をもたらしたのは小選挙区だ。当選できるのは唯一1人だから結果としての勝った負けただけにしか目が行かないと、その選挙区内でのどういった内容の戦いがあったのかを無視してしまうことになる。


■ 99対1で勝っても一つの勝利だが、53対47で勝ってもまた同様に一つの勝利にしてしまう。多数決の怖さはまさにここだろうし、今回の結果はこれを如実に表しているのではないか。おそらく、自民党の勝利は「紙一重」だった。しかしその紙一重を可能にしたのは選挙の論点を単純化して無党派層への呼びかけに専念した小泉戦術だったのではないか。


■ こういった選挙後で、正しい道を模索するときに、賛成してくれた人の声だけを鵜呑みにするのではなく、反対した人の声にも耳を傾ける必要があると思う。それが53対47なら53人の意見は聞いても47人の意見を無視するのはやはり違うと思う。しかし絶対安定多数を獲得した自民党は法案を単独で可決する力を持ってしまった。「国民が我々を選んだ」という大儀でなんだってまかり通る状況だ。それを食い止めることが出来る唯一の手段は、首相の判断だけだ。小泉首相は埋没された反自民に投票した人たちの声を意識するのか、それとも無視するのか。そういう意味でこの展開はむしろ小泉首相が真に日本を改革する男なのかの真意を伺える機会なのかもしれない。しかし、のんきなことを言っておいて独裁者だった場合、その影響をモロに食らうのは僕らやそれ以下の年代だろうけど。