東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『アメリカ・アメリカ』

■ 昨日の夜、ちょっと風邪を引きそうになった。今朝、寝起きはちょっとだるかったけど、ここにきて復調。あぶないあぶない。そして油断は禁物。


中上健次アメリカ・アメリカ』(角川文庫)読了。本を読むペースが極めて遅くなった。もともと本を読むペースは早いほうじゃないので、一日一冊は読んでいるとかいう人の話を聞くとそれだけですごいなぁと思う。さらに僕の場合、一度読んだだけでは理解できないことが多く、何度か読み直したりするので、一向に本を読むペースはあがらない。周りを見渡せば、本は山のように存在していて、どうしたって全てを読み終えることは不可能。それでも自分に興味のある本から手に取り、少しずつでも読んでいく。本を読むっていう行為はこうやって一生続いていくのだろう。まぁ楽しいのですが。


■ メンフィズからニューオリンズまでの390マイルをほぼ休むことなく走り続けた中上健次が早朝のニューオリンズで見つけた光景を書いた文章がある。

『車は、おりしもニューオリンズの湾に出来た橋の上を通っていた。掛けつづけていたFM放送が、雑音だけになり、不意にスペイン語が聞こえはじめた。その時はじめて夜が白み始めているのに気づいた。風景がしだいに貌を現わした。橋の下が沼の水におおわれ、樹木が根を水にひたして、まるでそれが、解き明かさなければならぬ聖者の最後のメッセージだったように思えた。車がまっすぐ海にむけてのびた橋に入った時、思わず私は声をあげた。海の彼方があからみ赧らみ、海が随分久しい以前からそこにあって、私が気づくのをまっていたようにたゆとう。』

その瞬間、その場にいた中上健次だけが見つけた風景がそこにあって、僕はその幸福な時間の断片をちょっとだけこの文章からわけてもらえた気分になる。

本を読む幸福はこういうときにある気がする。