東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

東京の果て『皆野町へ行ったり、新宿に行ったりな年末』

■ というわけで大晦日。いよいよ年末。早かったようなそうでもなかったような感じ。いずれにせよ今日で今年も終わり。で、去年の今頃は何をやっていたのかと思いちょっと振り返ってみると、東京は去年のこの時期に初雪が降っていたらしい。そうだったか。覚えているような覚えていないような。今年はまだ雪は降っていない。降ってないけどなんとも乾燥して冷え冷えとする寒さの12月だった。


■ 30日(月)。かげわたりの家常さんと映像を作ってもらうカタカナの谷川さんと芝居に関する打ち合わせをする予定だった。で、突如、埼玉県皆野町に行くことを提案してみた。今回の芝居では、埼玉県皆野町がチラホラ関わってくる。だけど実は一度も行ったことがなかった。ホームページをチラっと見たぐらいで、出来れば一度行ってみたいとおもっており、急遽行くことを提案してみた。


■ 本当だったら時間の空いている役者さんとも一緒に行けたらよかったのだけど、なにせ年末。そして突然。さらに車で行くとして、僕が用意できるのは車一台が精一杯で、その上、その車は座席が狭く男が3人も乗るといっぱいになるようなものでして。そういったわけで今回は3人で行ってきたわけでした。


■ なんとも快晴でドライブ日和な一日だった。道中はいろいろなCDを聞きながら3人でいろいろ話して盛り上がった。関越道の車の流れも順調で、花園インターまであっという間についた。インターを降りると埼玉県寄居町に入る。そこから国道をちょっと走る。ちょうど夕陽が出てくる時間で、秩父の山々にオレンジの色の夕陽が差していた。山の美しさにしばし見とれる。それから寄居皆野有料道路という道路に入る。山の中をトンネルがどーんと貫いている。その道路が出来たおかげで皆野の町へ行くのに20分ほど時間を短縮できるそうな。ただ、そのトンネルの長さといったら尋常じゃない。ずっと続いている。山の中の、木々の下の、土の中のずっと奥。延々とトンネルが続く。


■ かつてこのトンネルの中を、ある目的を持った人たちが同じように車を走らせていた。僕たちはその人たちの通った道を辿っている。トンネルの中は、電灯が等間隔で並んでいるので暗くはないが、その明るさがトンネルの輪郭を際立たせて、等間隔に並ぶ電灯が一定のリズムを刻むようにして車の後方に通り過ぎていく。そういったもろもろがまるで出口のない空間をいつまでもずっと走り続けているような感覚にさせる。なんだか眩暈がしそうになる。


■ 誰かが言った。

「車の中で、あの人たちはどんなことを話していたのかね」。

結構明るい話題で盛り上がっていたのかもしれない。自分たちがこうやって車を走らせている目的について真剣に話していたのかもしれない。あるいは会話はなく無言のままでこのトンネルを走っていたのかもしれない。想像はいくらでも出来る。だけどそのことを完全に理解することはできない。だからただ、こうやって同じ道を走って、その人たちが見たであろう光景を自分も見つめてみる。


皆野町は思っていたよりも大きな町だった。スーパーも病院も学校もある。住宅も多い。国道沿いにはファミレスもある。少し車を走らせれば寄居町まですぐに行ける。自然もたくさんある。皆野町の観光名所である美の山公園は春になると桜がたくさん花をさかせて、町はその桜を見に来る観光客でにぎわうのだという。多くを望まなければ、何不自由なく暮らせる気がした。


秩父鉄道皆野駅は小さな駅だった。秩父鉄道皆野駅から池袋まで出ようとすると寄居駅まで行き、そこから東武東上線に乗り換える必要がある。乗換えに要する待ち時間も考えると最低でも片道2時間ほどの時間がかかるそうだ。駅前に行くと、女子校生と思われる若い女の子が2人おしゃべりをしていた。電車を待っていたらしく、駅に電車が着いたところで2人は別れて、1人は電車に乗りこみ、もう一人は僕たちの横を通り過ぎて町の中へ歩いていった。谷川さんが女の子たちをみて「バックをもってましたよ」と言った。「大きな街でしか売ってないメーカーでしたよ、こういう町では売ってない。池袋とかその辺に買いに行ったんですかね」。そう言われてそのバックを確認しようと思ってもう一回その女の子の方を振り返ったのだけど、すでにその女の子はどこかに行ってしまったあとだった。


■ 美の山公園のある場所に行くために山道を車を走らせた。山からは町が見渡せる。暗くなり始めた町には灯りが点々とつきはじめていた。この町にもたくさんの人が住んでいる。そんな当然のことを改めて思ってみたりした。


■ 目的の、そのある場所は写真で一度見た程度で、はっきりと知っているわけではなかったのだけど、車でその場所にたどり着いたときすぐに「この場所だ」と感じることができた。別になんの根拠もなかったけど、確認の必要はなかった。直感的にここだと思った。木々は葉が枯れ落ちていて、枝や木肌がむき出しになっている。驚くほど静かで、痛いくらいに寒い。3人でその場所に立ってみた。

「どういう思いでこの場所にいたのか」

どうしたってわからないそういう疑問ばかりが勝手に浮かんでくる。何かずっしりとしたものがお腹の中にたまっていくような気になる。しばらくその場所にいてから、さらに車を山の頂上まで走らせてみた。山頂から見える秩父の山々の風景はとてもきれいで、ちょっとほっとした。


■ そんなこんなで皆野町を後にした。一度行ってみてよかったと思った。本当にそう思う。


■ それから家常さんと別れて、谷川さんと僕は早朝の新宿に行った。芝居で使う映像の撮影のため。暮れの新宿は朝4時ぐらいでも人がたくさんいた。車もたくさん走ってた。新宿の夜明けは6時過ぎだった。思っていたよりかなり遅かった。車で来たから多少は寒さをしのげたけど、外にいる間は寒くてガタガタ震えた。快晴の空には直視できないくらい眩しい太陽が昇った。新宿御苑のはるか向こうから、新宿の街を照らしていた。青い空。光り輝く太陽。朝の新宿。大晦日の朝焼けはとてもきれいだった。


■ そういったわけで、今年はもうすぐ終わりです。明日の天気は宜しくないそうです。まぁ、雨やら雪の年明けもそれはそれでよいのではないでしょうか。僕もいろいろあった一年でしたが、やはりそういったことが楽しかったわけでした。年明けはすぐに公演があります。本当にすぐなのでいろいろがんばりたいと思います。


■ なんにせよ、みなさま、よいお年を。