東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『SOIL(ソイル)』

ミラー

■ 土日に関東にいなかったので定かではないけど、今日は久しぶりの快晴。そして蒸し暑かった。夏先取りな気分。溜まっていた洗濯物を一掃。乾け、服たち。


サッカー日本代表は少なくともブラジル戦を2点以上で勝たないと次にはいけないらしい。その条件で勝ってもオーストラリアがクロアチアに勝ってしまうと駄目らしいけど。オーストラリア戦の得点をキーパーチャージだったとすると日本チームは今大会においてまだ得点を入れてないことになる。まぁキーパーチャージってことじゃなくてもきちんとしたセットプレイやシュートでいれた得点はないわけで。それで即、得点力がどうのこうのと言えるほどサッカーに詳しいわけではないし、体感気温が30度以上のピッチ上で国の代表という立場でプレイをする選手の重圧たるやテレビ映像を見てるだけでは想像も出来ないし、単なる傍観者の僕が何をいわんやというものなんですが、こうなってくるともう日本どうこうではなく、どこのチームにせよ、どの選手にせよ、素晴らしいプレイを観ることを喜びとしてワールドカップを観ようと改めて思うわけでした。昨日の日本戦は個人的に稲本がすごく良かった。ねちっこいディフェンスをしていた。


カネコアツシさんの『SOIL(ソイル)』(エンターブレイン)を既刊されている4巻まで怒涛のように購入してしまった。おもしれえんだ。「そいるニュータウン」という架空の街で起きたある家族の失踪事件から端を発する様々な出来事をミステリー風に描いているけど、かといって謎解きがメインではなく、その事件に関わる人たちがどのような行動をするのかという点に重点が置かれているのがすごくいい。ニュータウンという場所で表面上の付き合いをする住人たちの欺瞞が次々と暴かれていくことで見えてくる人間の本性。関係性の中で相対的にしか生きることが出来ない人間の脆さのようなものが見えてくる。


■ 関係性を描く作品というのはたくさんあるけど、『SOIL(ソイル)』がそれだけじゃないのは、ニュータウンが出来るずっと前からその土地に存在している宿命のようなものがそこに加えられているところで、ある種壮大な悲劇的側面と、滑稽な人間関係による喜劇的側面が巧みに組み込まれているところ。4巻に至ると、もはや謎は人知を超えたところまで発展し、解かれることに重点は置かれず(それでもものによってはきちんとミステリーの要素も残している手腕がすごいけど)、その理解を超えたところにある謎(状況)に直面した人間がどう振舞うかが描かれる度合いが強くなり、いよいよ面白い。ミステリーものとして見るより、もはや望月峯太郎さんの『ドラゴンヘッド』のような作品を見ている気分に近い。


■ それがその方の画風なのか、他の作品を観たことがないので僕には判らないのだけど、人物の輪郭はきっちりと力強く描かれてあるのに、色づけはほとんどされてない。髪の色をクロでベタ塗りしているのもごく少数で、たまに服の種類によってスクリーントーンを貼っているのもあるけど、ほとんどの人物は真っ白。それがはっきりとした「個」を持てないで、まわりから飛び出だすことを恐れ横並びをすることをよしとする人間を表現しているようで不気味さが増す。それに時折、クロで人物の陰影を表現したり、背景画にこれでもかというほど禍々しくクロとトーンを使う場面があり、それが人物の白さと相まって効果が倍増する。そういった表現以外にも、コマ割りに工夫があったり(例えば1巻のニュータウンの描写で、均等に割られたコマに街の風景が描かれているのは、どこをとっても均一な街だということを際立たせた見事な描写だと思う)、いたるところに漫画でしか出来ない表現がふんだんに盛り込まれている。あ、こういう表現を意欲的に取り込んでだ作品って手塚治虫さんの漫画にいっぱいあったな。そうだそうだ手塚治虫さんの作品を観てるときに感じる刺激に近いや。そういったわけで、刺激受けっぱなし。