東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『電車に揺られる』

■ ある仕事で、携帯型音楽再生装置、ええとつまり、ipodが必要になった。(かつてそういう機械の俗称はウォークマンで通ったけど今はすっかりipodなんだろうな。まぁそれはさておき。)僕がそれを持っているのでそれを使うことになり、押入れの奥からひっぱりだした。それで初めて気付いたのだけど、僕はipodの封さえ開けてなかった。以前働いていた職場を辞めるとき、そこの職場はいわゆるでかい会社の関連会社で、有難いことにある一定期間勤続して辞めると会社から粗品がもらえることになっている。その粗品の中にipodがあるのだ。僕はあまり、というかほとんど外出の際に音楽を携帯する習慣はないのだけど、ipodがあれば聴くかなと思い有難く粗品としてもらったのだけど、いやー、聴かない聴かない。それにしてもまさか封さえ開けてないとは思わなかった。宝の持ち腐れとはまさにこのことだな。


■ で、今日。話は変わる。不意に電車に揺られたくなり、「これは電車に揺られなくては」と思い、新宿から中央線の快速に乗る。揺られるお供に木下順二さんの『ドラマの世界』。この本がべらぼうに面白い。立川で青梅線に乗り換えて青梅へ。青梅を越えると視界の先に山が見えてくる。青梅からさらに乗り換えて奥多摩を目指す。車内はいよいよ乗客が少なくなる。車窓からの風景をぼーっと眺める。車を運転する人がいて、畑を耕してる人がいて、家があり、竹林があり、山がある。僕とはまったく無関係に生活をする人たちがそこにはいて、僕はただその人たちの生活の本当に一瞬を電車の中から見るだけに過ぎない。奥多摩まで、新宿から約2時間。終点。文字通りそこで線路が終わる。

吐く息が白くなる寒さ。車がわずかに通る音しか聴こえてこない。新宿とは異なる音の質感がある。今回の目的は電車に揺られることなのでまた電車に乗る。途中、御嶽という駅で快速電車に乗るためしばらく待つ。静かな駅舎。日も暮れてあたりは暗い。空を見上げるときれいな三日月がある。写真を撮ってみると点のようにしか映らなかった。

いづれまた電車に揺られる旅をしたいと思う。


■    観た映画メモ。
   
     ジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス 『リトル・ミス・サンシャイン
     サム・ウッド  『マルクス兄弟オペラの夜』


リトル・ミス・サンシャイン』は資本の枠組みから抜け出す喜びを発見した家族の物語。枠組みから抜け出したからには、あのおんぼろのワーゲンを今後も家族で押し続けなければいけないことになる。ダスティンホフマン主演の『卒業』のラスト、花嫁を式場から連れ出した青年の表情は笑顔の中にも先の不安を抱えていたように思えたが、この映画は笑顔でワーゲンを走らせる家族の表情で終わる。ただ、まずは気付くことこそが重要であるのだから、この映画においてミスコン会場でがむしゃらに踊る家族の姿になんともいえない痛快さを僕はひとまず感じる。