東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『要町と名前』

■仕事後、要町の区民施設に2月末にある芝居の稽古を観に行く。僕が区民施設に着いたのが20時過ぎだったので、すでに稽古は始まっている。施設には演出のKさんと役者のTさん。一人芝居の稽古は何やら濃密だしすっきりだし、だ。

やっていた稽古はあるシーンで吐き気を催す主人公が嘔吐する場面。当然、実際に嘔吐をするわけではない。「オエー」とTさんが吐く演技をするのだけど、どうやら演出のKさん的にその嘔吐の演技がしっくりこないらしい。なんでもTさんの「オエー』で吐かれる吐瀉物は水っぽすぎるらしい。それでTさんへ出された指示が

『もっと水っぽくないゲロを吐いているオエーで』

まったく演出と言うものは恐ろしい。そして役者は時に無茶な要求を受けるものだと痛感する。


当然、ゲロばかりでなく他のシーンも稽古を行なう。動きの切れ目ごとに細かく切って、その都度、動きをつけ、台詞のトーンに指示をだす。そうやって数回繰り返した後、改めてもう少し長い文節で動きを通して行く。大学の頃、芝居の稽古をしていたときは、僕もそういうやり方をしていた、ような気がする。東京で芝居をやるようになってから、特に最近はそういう演出はやめた。出来る限り、長く芝居に切れ目がない限りこちらからは止めないで、役者の人に動いてもらう。
どっちが良いとか悪いとかのアレではなく。僕もどういうやり方が良いかは未だに判らない。僕は僕で、こちらかは切らない方が役者の人はやり易いと思うのだけど、そうじゃなくて細かく指示を欲しいという役者さんもいるかもしれないし。


で、僕が稽古場に行ったのは単なる見学ではなく、映像部分の打合せをしたかったから。今年に入ってから大幅に演出の方向性を変えたということで、映像に使う音楽も変わることになり、映像ももう一度最初から作り直すことになった。丁度、新しい音楽も出来て、役者の動きと音楽の兼ね合い、ここから映像が始まるという箇所を教えてもらう。


■稽古が終わってから、要町駅前にあるラーメン屋でKさんと食事をしつついろいろ話す。映像に関して、僕がイメージを話したけど、Kさんからあまり良いリアクションが返ってこなかった。Kさんの考えているイメージと違ったのか、僕の説明が判りづらかったのか。ひとまず僕が考える方向で映像を作り、それを一度見てもらうことに。

それにしても、要町は池袋の隣ということもあり微妙に近すぎて電車を使うことは今までなかった。歩くこともほとんどなかったが、なにやら面白い名前の建物をいろいろ見る。例えば

『ほっかほか弁当 かなめちゃん』

これは、まぁ、土地の名前を自分なりにアレして名前をつけたのだろうけど。『ほっかほか』と『っ』の使い方にもなにかしらの意図を感じる。他にも

『ハイム瞳』

どういった経緯でそう言う名前をつけたのか。瞳はどこから来たのか。立地的には駅からも近く申し分無いけれど、しかし瞳に住むのは抵抗がある。

■で、ラーメンを食べ終わって店を出ようとすると傘立てに置いてあった僕の傘がなくなっていた。誰かが持って行ってしまったらしい。ちくしょう。仕方が無いので、ラーメン屋の隣にあった個人経営のコンビニのような店に行く。コンビニのようなというのは、なにせその店の看板には

『コンビュニエンスストアー』

と明記されていたからで、略するとしたら当然『コンビュニ』と呼ばなければならないからだ。コンビュニのビニール傘350円なり。おそらく要町にはさらにいろいろと面白い名前の建物がたくさんあるだろう。きっとある。

そういったわけで映像のことを考えつつ帰宅。