東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『タクシー夜話』

一昨日まで、ある仕事で何日間か明け方ちかくまで仕事をしており、タクシーで帰宅する日々が続いた。無論、自腹ではそんな裕福なことはできない。

山手通りで捕まえたタクシーに行き先を告げると、運転手が「お客さん、領収書は必要ですか?」と聞いてくる。当然必要だったので「はい」と告げると、一瞬間があってから、判りました、と返事がありメーターを倒して走り出した。しばらく走ってから運転手が、また口を開いた。
「実はですね、お客さんが領収書必要じゃなければ、3,000円で池袋まで行こうと思ったんですよ」。
要するに、実際には深夜帯にタクシーで走ると4,000円ほどかかる場所に、メーターを倒さないで3,000円で行き、その金全てを自分の懐に入れるという話である。こちらは1,000円ほど得するし、運転手も会社に売上げとして計上せずに自分の手元に残るわけで、まぁどちらにも悪い話ではない。それにしても、なんとも隙間をアレする稼ぎ方だ。なんか、こう、でっかくアレして金が入らんもんかねぇ。


ふと、しりあがり寿さんの漫画が読みたくなり、本屋で物色。『方舟』を購入。線の細い、『軽さ』を感じる筆致で描かれる『終わり』の、なんともいえない静謐さ。霧のような雨が、静かに世界を覆う。言葉にするとそれはどこか美しくさえある。

三好銀さんの『海辺へ行く道』も面白かった。ある境で、現実と非現実が分けられているとするならば、その境界がおそらく実世界よりも少し別の場所にあるような。そんな手触りのする作品。

僕が作品に触れて刺激を受けたり、自分で何かを作る時にいつも考えることは、きっとこの境目の部分であって、そこを意識して描かれる作品って言葉にするとファンタジーというジャンルなんだと思う。

やけに暖かい一日。春の心地。