東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『7末、マンデイ』

小栗康平さんの『映画を見る眼』は、穏やかな文体で書かれた小栗さんの映画に対する考え方が読めるけれど、その文章の端々に、映画を観ることで感じる画作りの妥協の無さをひしひしと感じる。『眠る男』のメイキングにて、少年が森で昼寝をするシーンで、木々を揺らす画を撮る為にヘリコプターを出動させていたのには驚いたけど、本には『死の棘』の家族旅行のワンカットのために、福島、山形、茨城の三箇所で撮影を行なったとあり、その妥協のなさにただただ脱帽。映像に映っているものに偶然はないと、穏やかな文体で断言する姿勢。この本は、僕が映像を作って行くにせよ行かないにせよ、一生読み返したい一冊。

そういうわけで、本書に書かれたものはやはり見たくなるのが性分というものであり、小栗さんが大好きだと書いてある、イム・グォンテク監督の『風の丘を越えて』が観たいのでさっそくamazonで調べたものの、そのあまりの高額な売値にさすがにひるむ。レンタル屋さんにあるものなのか。発売元のアップリンクで、再発してくれないか。


仕事後にクリストファー・ノーランの『インセプション』を新宿で観る。『ダークナイト』にあった選択の葛藤が、ひいては他者への絶対の尊厳に発展していくのに対して、本作はあくまで個の枠内で葛藤が閉じている。というか、葛藤しつつも選択肢を用意していたあたり余裕があった感あり、ディカプリオ。知的娯楽大作。『タイタニック』の頃から思ってるけど、個人的にディカプリオの立ち姿があまり好きではない。どんな服もダボッと見える。腰回りが1本の棒みたいで、しまってないというか。映画鑑賞後、無闇に眉間に皺をよせて、映画館を出たくなる作品。いや、意味はない。