東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『知らない町へでかける』

13日(金)。嫁さんと娘さんが山形へ少し帰省したので、久しぶりに一人(と猫一匹)。仕事で少し遅くなったけど、仕事帰りにTSUTAYA代官山へ寄ってDVDを物色。いくつかレンタル。TSUTAYAから出ると雨が降っていて、足早に駅へ。でも、地元の駅について地下から出ると地元は雨が降った気配はなかった。空には満月。

で、さっそく1本。『ウルヴァリンSAMURAI』。ジェームズ・マンゴールド監督ということでどういった感じになるのかと思ったけど、少し残念な感じ。日本という設定にした理由はなんだったのだろう。ラスボスのロボットをわざわざ刀使いの侍風にすることは、ロボットとしてマストなことなのだろうか。序盤の、おそらく大門の増上寺での告別式シーンから高田馬場駅付近〜パチンコ店そして上野駅へ至る逃走シーンは、こちらが地理を知っているからめちゃくちゃ移動してるなぁと思うものの、製作スタッフ陣からしたら、そんな地理的な距離は知ったこっちゃないよというカットのつなぎがそれはそれで面白かった。あれ、それにしてもどんな風にロケやったのだろう。


14日(土)。少しだけ朝寝坊。娘がいないと起されないわけでちょっと油断する。ただ、猫のみぞれが「はやく餌をくれよ」と顔を掻いてくるので結局それで起されるのだけど。快晴で気持ちよかった。晴れるとすぐに布団を干したくなるのだけど、夕立への不安があり干すのはやめて出かける。


少しばかり仕事。久しぶりに成城学園前に行く。引っ越す前は池袋駅を使っていたので、山手線から小田急線に乗り換えていたけど、雑司ヶ谷駅を使うようになってからは少し面倒なのだけど明治神宮前まで副都心線を使って、そこから千代田線で代々木上原へ行き、小田急線に乗り換えるルートを使用。遠回りってほどではないけど、やや面倒。少し待ち時間のある仕事だったので、その間にひとつ映画の脚本を読む。夕方終了。成城学園前駅の本屋で竜田一人さんの『いちえふ』一巻を購入。福島第一原発で実際に働いていた作業員の方のルポ漫画なので、実際の手触りを感じられるように思う。帰りの電車の中で読み進める。


帰宅後、家常さんの家へ。喫茶店開業に向けて店作りをしている場所に合流。といっても僕が来た頃にはその日の作業は終わっていたで申し訳ない次第だったのですが。終了間際、なぜか集合写真を撮っていてそこだけに参加するということになったものの、なぜ集合写真を撮っていたのかは不明。それからみんなと食事兼飲み会。いつもにも増してデタラメな話ばかりしていた。楽しかった。帰宅してからDVD。『ワールドウォーZ』。出てくるゾンビの走りっぷりよ。なんて早いんだ。あれは怖い。なんでゾンビが世界的に広がっていくのか、そこの説明はされないままに次々と猛然と走るゾンビたちを出現させて、それから逃げまくるブラッドピットを追い続ける。9・11以後のパニック映画としてスピルバーグの『宇宙戦争』があるならば、またそれ以後の時代のパニック映画としての『ワールドウォーZ』があるように思える。とても参考になる町山智浩さんによる解説があった。


15日(日)。またしても少しばかり朝寝坊。猫のみぞれにがりっと顔を掻かれて起きる。それから思い立って出かける。家を出て直後、近所のいろんな家から「おおお」と叫び声が聞こえた。何かと思ったけど、おそらくワールドカップで日本チームが得点を入れた瞬間だったと思う。


そんなワールドカップから遠く離れて、JR中央線に乗って一人出かけた。先日、雑誌のつげ義春さん特集を見ていたらなんとなく旅にでかけたい気持ちになり、それも電車ででかけたくなったので出かけた。中央線でとりあえず高尾まで行き、そこでさらに甲府行きへ乗り換える。電車出発まで30分ほど待ち時間があり、座席に座ってのんびり待つ。隣のシートに座った男女は最初夫婦かと思ったけど、親子連れだった。男性の方が、おそらく少しばかり知的障害をお持ちの方で、甲府行きの電車に着いていたドア開閉の押しボタンを「閉めたい!閉めたい!」と言って押していたが、まだ出発前だったので閉まらずに「閉まらない!閉まらない!」と一人声をあげていた。


高尾から3駅ほどいった上野原駅で下車。上野原駅を選んだことに深い理由はないのだけど、つげ義春さんが旅で訪れたことがあるらしい秋山温泉という場所が上野原駅から行けたので、なんとなく上野原駅にしようと思った。電車移動はわずか1時間半ほどで山に囲まれた長閑な町に着いた。秋山温泉に行けるかどうかわからなかったけど、ひとまずその方面に向かって歩いてみた。晴れて気持ちがよかった。山へ向かう道が徐々に傾斜がきつくなり、歩道も無くなってくる中、一人歩いていたのだけど、あれは車を運転する人からするとどういう見え方だったのだろうか。山間なので長いトンネルを3カ所あった。そのような長いトンネルを初めて歩いて通過した。トンネルの中はひんやりとして自分の足音が響いた。


1時間20分くらい歩いて、ようやく秋山(地区?)に到着。長閑な道の散歩だったので気持ちよくあるいたけど、たまに蛇の抜け殻とかトカゲなどを見かけ、さすが山間の道だと思ってみたり。そんなこんなでやっとこそ秋山温泉にたどり着いた。そこは日帰り温泉施設としてしっかり作られた温泉で温水プールまで付いた至れり尽くせりな施設だった。ちょっとばかりうらぶれた侘しさのある温泉を想像していたので肩すかしをくらったような気にもなりつつ、汗をかいていたので温泉へ。気持ちよかった。源泉のお湯はアルカリ性でぬるっとしており、水温が低かったので長湯してしまった。その施設にあった食事処で蕎麦を食べたけどそれも美味しかった。帰りは有り難いことに施設から上野原駅までの無料送迎バスが出ていたので、それに乗る。わずか15分ほどで駅到着。文明すごいな。車って便利だ。駅周辺に戻ってきたのは夕方だっただけど、まだ日も高かったので駅の傍を流れている相模川の川沿いでゆっくりと本を読むことにした。ベンチに座って家の本棚にあった山田太一さんの『異人たちとの夏』を読む。タイトルは知っていて以前古本屋で購入したものの読んでなかった本。山田太一さんの文章は本当に面白い。そして読ませる。行儀悪く、ベンチに横になって本を読んでいると幸福な気持ちになる。風が気持ち良い。川では釣りをしている人や、散歩をしている人たちがいる。川に石を投げて遊んでいる家族連れもいる。たまに空を見上げる。雲がいくつもある。それでまた本を読み、一息ついて空を見上げると、さっきあった雲はもう見当たらず、別の雲が空を形作っていた。刻々と変化している。そんなことを感じたりしていた。日が暮れるまで読んで、上野原を出ることにした。ぶらりと1日でかける。わずか1時間半ほどの移動で訪れることができた未知の土地。当然、誰も僕のことを知らない。なんだかスパイになったような気持ちで、見知らぬ町を誰に気付かれるでもなく歩くことの面白さ。帰りの電車の中でも『異人たちとの夏』を読んだ。東京駅まで向かう間に読み切ってしまった。止まらない。それほど山田太一さんの文章が読ませるものだった。面白かった。


東京駅で、山形から帰ってきた嫁と娘と待ち合わせ。2日ほどしか離れてなかったけど、会えるとうれしい。それにしてもとても晴れて気持ち良い週末だった。