東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『目の前からいなくなる』

tokyomoon2016-10-06

引き続き、暑い日々が続く。幼稚園の入り口に温度計があり、子供達がそれを見て今朝は「27度ー」と言っていた。もう10月だけどまだまだ半袖で問題無し。


とくになんのつもりもなく、久しぶり読み返そうと思って、三好銀さんの『海辺へ行く道 冬』と『いるのにいない日曜日』を読んだ。ああ、やはり面白いなぁ、と、その心地良さについて考えたりしながら、ふとネットで三好銀さんのことを調べたら、訃報を知った。8月の終わりにお亡くなりになられていたのだという。ただただ驚いた。

寂しいなぁ。もう新作は読めないのか。最近、漫画を読む機会も減っている中で、それでも幾人かその方の作品というだけでチェックしていた漫画家のお一人だった。まだ買ってなかった単行本は必ず買おうと思う。『海辺へ行く道』シリーズの他の2冊も読み直そう。

ニュース記事を追おうかとも思ったけど止めた。深く知らず、理由も無く目の前からいなくなってしまった、という方が、なんだか三好銀さんの作品のようだなぁと思った。


松永大司監督『トイレのピエタ』。病院の屋上で主人公を演じる野田洋次郎さんとリリーフランキーさんの会話を、洗濯して干している白いスーツ越しに撮っているシーンが印象に残った。深い会話ではなく、退院したら何をするのか、仕事に復帰するというたわいもないやりとりだけに、特にアップで追う必要も無いからだろうけれど、引きのワンショットで撮っているのだけど、風に揺れるシーツや曇り空の中で、本当になんてことない会話をしている感じが良かった。


「死」を、特に癌などの大病で余命間もない人がどのように生きるのかを描くというのは本当に難しい。劇中に登場するヒロイン的な立ち位置の女子高生の「死」に対する感覚。あそこまで少し強めに振ることで、言葉少ない主人公との対比にもなるのだろうし、主人公の中にも似た葛藤があるからこそ互いに惹かれることもわかる。「死」ぬ人の気持ちが、完全にわからないのは、生きているからで、僕たちは、生きている側から「死」を想像するしかない。「どうやったら死ねますか?」という女子高生の問いかけに、自身も大腸癌の治療をしている中年を演じたリリーフランキーさんが戸惑いながら「わかりません」と答える、その立ち位置にいながら、「生」と「死」を擬似的に体験することが映画にはあるのかもしれないが、それでも癌という本当に切実なテーマを使っているから、受け入れたり受け入れられない部分も様々にあるのだと思う。


清掃員、窓を拭く、金魚を入れたプールで泳ぐ、水着の先輩に自転車で追いかけられる。たわいもない日常の中に、切れ込みをいれるような描写が上手な監督なんだなぁと思った。