東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『睾丸/晴れた暑い夏の日』

tokyomoon2018-07-19

どうかと思うほど暑い日が連日続く。外を歩いているとあっという間に汗だくになり、汗っかきの自分はなんだか恥ずかしい気持ちになる。蝉もすっかり賑やかに鳴いている。以前、何かテレビ番組で千原ジュニアさんが蝉はあんな小さい身体で、これほど暑い時期に八日間くらいありえないでかさの声で鳴き続けるわけだから、そりゃ力尽きてしまうはずだ、的なことをおっしゃっていたけど、それは確かにその通りだなぁと思う。


日曜。ここしかないとふと思い立ち、池袋で上演していたナイロン100℃『睾丸』を観に行く。ナンセンスに振り切らず、ストレートに学生運動時代から25年経って、凡庸にいきつつもとある事故を引きずる人々の姿を描く。前半のひりつくような緊張感を、後半やけにさらりと回収するけれど、それは僕が俯瞰的に25年を横断したからで、当事者たちにとってその時間の積み重ねは計り知れない。いや、多分、それほどでもないのか。主人公たちはとある事件の被害者を病院に見舞いに行くが、次第に通う頻度は減って行く。罪に苛まれながらも意識は次第に薄まる。薄まるというよりも、他にも考えなきゃならないこと、喜び、悲しみ、苦しみ、安らぎ、様々なことがやってくるわけで、一つのことにばかり向き合えるはずがない。そうしてやがて散漫になっていき、次第にいろいろなことは薄まる。

きっとそうでないと人は生きていけない。

話の筋とは別に、熱を出した坂井真紀さん演じる妻が、ピーチネクターを飲みたいと旦那にせがむ場面。冷蔵庫から寝室へ、ゆっくりと歩いて消えて行く動きが印象に残った。ピーチネクターは25年前に好きだった飲み物。それは微かに発した旦那へのアピールのようにも感じた。作・演出のケラさんがおっしゃっていたが、この作品の初日にオウム真理教麻原彰晃の死刑が執行されたことが報道されたことも何か不思議な縁があるのではないか。そもそも死刑執行は報道されるものなのか。



そして、観劇後、充実して職場へ向かおうとしたとき、サニーディサービスのドラマー丸山晴茂さんの訃報を知る。あまりの唐突のことにびっくりする。何より若い。最近の精力的なサニーデイの活動の中で、丸山さんがお休みをしていたことは知っていたし、でも、それはやがて復活するための準備期間だと思っていた。決定的に不可逆で、もう戻ることはないということが本当に寂しい。あの頃、サニーデイサービスを繰り返し聴いた。気恥ずかしい言葉でいえばそれは『青春』としか言えない音楽を伴う記憶。とても愉しい、愛と笑いの日々。

どうかと思うような暑い今年の夏。これまでも学生から社会人まで暑さの中でサニーデイのいろいろな曲を聴いた。これからもきっとたくさんの曲を聴く。