東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『きっとわからない』

土曜の深夜のETV特集で映画『ひろしま』に関するドキュメンタリーがやっていた。僕が映画『ひろしま』を観たのはいつだったか、日記を振り返ると2012年だった。自主上映していたことをしり観に行った。戦後8年ほどで、原爆の出来事を後世に伝えるために映画を作ろうと乗り出した人たちがいたが、反米的だとして配給会社から編集を指示されたり、映画に参加した人たちが共産党主義と中傷されたりしたという。戦後わずか8年でその状況。そういった空気感は確実に現在にもつながる。

 

ドキュメンタリーの中で映画に参加した被爆者の男性が「自分たちの経験は、それを経験してない人たちにはわからない」ということを語っていた。それは否定的な発言ではなく、だからこそ自分たちの経験を伝えていかねばならないというニュアンスだけど、これに似た言葉を以前に、西日本洪水で家を失った女子高校生がしていることを思い出した。洪水を経て、仮住まいから少し離れた高校に通っていた女子高生は同級生たちから「大変だったでしょ?」と言葉を投げかけられたが、それにどうこたえていいものか戸惑ったという。「自分の経験は、それを体験した人にしかわからない」。それまではどうしたって他人事だった、自分が経験したからこそ、自分の中で想うことがあるが、それは他の人にはわからない。その言葉の意味はとても重い。自分は経験をしていない立場として、映像や言葉からその出来事を事実として知るしかない。

 

で、その映画『ひろしま』はNHKで17日に放送されるのだという。録画せねばなと思う。そういえば、娘が僕の本棚にあった漫画「ペリリュー」を読んで、怖くて、もう戦争の話は読みたくないと言っていた。それで、良いと思う。怖いものは怖い。今は「怖い」ということを感じてくれればそれでいいと思う。だからこそ、それが行われることの不条理を、おかしさを、少しずつ何かで触れて学んでいってもらえればと思う。

 

 

日曜。仕事で少し運転。中央道が予想以上に混んでいて、渋滞でびっくりした。久しぶりに中央道を少し走ったが、その後はすぐに都内へとんぼ返り。空が青く、雲がもこもことして気持ちがよかった。仕事がひと段落してから、少し休憩しようと思い、カルピスを買って新宿御苑へ。さすがに日中は暑いけど、木陰に入ると気持ち良い。本を読んでごろごろする。風が吹くと、木々が揺れて、蝉がうるさいくらいにミンミン鳴いている。日が暮れてくると、蜩が鳴き始めた。新宿のNTTタワーの方に雲がかかり、オレンジと蒼が混じって徐々に暗くなっていく。なんだか、ずっとぼんやり眺めていられる。閉園ギリギリまでいて、それから仕事で喫茶店へ。メールをしながら、本も読んだり。少しゆっくり。

 

家に帰ってから、映画『勝手にふるえてろ』を観ながらのんびりする。原作ありきの作品で、脚本と撮り方に監督の意志を強く感じる。二つのクレジットがあることもあり、監督が脚本を書いていることの強さはやはりあるなぁと。あと、なんにせよ、主演の松岡茉優さんのお芝居。とかくオタクっぽくなりがちになりそうなキャラクターが、それだけでない魅力があり、改めて素敵な女優さんだなぁとぼんやり眺める。ということで、ずいぶん夜更かしをしてしまった。深夜3時過ぎ、窓を開けていると、風が心地いい。微睡んで、気が付いたら眠っていた。

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