東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『ホームレス理事長』

朝から強い雨が降っていて、一気にかなり冷え込んだ。傘を持つ手が冷たくて辛い。そういう日に限って朝から外で仕事。下町の住宅街。昔ながらの団地の近くを歩く。そういう団地にはクリーニング屋やスーパーが1階のスペースにあったりして、その団地に暮らす人たちからするととても便利なことになっているのだろう。特に昔はそうだったんだろうなぁと想像する。今はコンビニもあるし、そこまで重宝されていないのかもしれない。それにしてもそういう団地の下にある店舗は個人経営の店が多く、なんとも渋い味のある店舗が多い。ふらふらと見ているだけで楽しい。

いくつか仕事、いろいろ。なんにせよ、いろいろがんばらねばならない。

家に帰って映画。というか今日はドキュメンタリー。東海テレビ制作の『ホームレス理事長』。さまざまな事情で学校を中退した元野球部の高校生たちを集めて、合宿生活をしながら野球を続けさせて、高校も卒業できるようにするとある学校のNPO法人の理事長を中心にカメラで追ったドキュメンタリー。表面だけ見れば、ドロップアウトしかけてしまった少年たちを救うためのとても素晴らしい活動だけれども、その活動を維持するための資金集めなど現実は経営が厳しく、理事長である男性はその資金集めに地元の会社を草の根分けて歩いてまわる。これがなんというかとてつもなく過酷。野球を行う現場でもトラブルが起きつづける。そこに集う若者たちはあ

る意味では不良と呼ばれてしまう子たちも多い。チーム内での虐めなどや、練習が辛くて来なくなる子たちもいる。雇われている監督も別の学校で暴力事件を起こしてしまい逮捕歴がある監督。とある場面、野球部に通う少年が、家で親と口論になり苛立って手首を切る事件が起きる。そのため、翌日の試合に遅れてやってきたが、事情を聞いた監督は、その少年を思いっきりひっぱたく。それは映画などのいわゆる『演技』とはまったく異なる、静かで強烈な行為。しかも監督の平手は一回ではなく、何度も何度も行われる。暴力と言われれば暴力で、それが良いのかどうかは正直なところ判断はつけにくい。「手を出すことも教育の一つ」というわけでもない。けれど、その行為には、監督自身がその少年と真剣に向き合おうとする姿勢を感じられるものだと思った。その行為がカットされずに本編に使用されていることの凄さ。他にも、理事長が資金繰りに苦しみ、返済期日に間に合わないと判断して取った策が、テレビクルーたちに金を貸してほしいと懇願をする場面がある。そこで理事長の語る言葉の中に「自分たちがやっている活動を理解して、応援してくれる人たちが必ずいる。だけどその人たちを見つけ出すことができない。それが悔しい」という言葉を発する。自分の生活は省みず、電気、ガス、水道を止められ、果てには借家を追い出されてしまう。漫画喫茶に寝泊まりしながら、それでも資金繰りに奔走する。その姿を見ていると、なんとも胸が苦しく、そこにある生き難さ、辛さに、どう向き合えばいいのかと思う。救いなのは、理事長の不思議な前向きさ。いや、不思議ではないなぁ、自分がやることに迷いがないところがすごい。迷いはあるのか、だけど揺るがない、その強さ。そこに不思議な吸引力がある。