東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『母の転院』

21日(水)。早朝から起きて支度をしてから母が入院する病院へ向かう。リハビリを中心とした病院へ転院をすることになり、指定された朝8時に病院へ向かうためいろいろ準備。埼玉の少し行きにくいところにある病院だったので都電に乗ってから地下鉄に乗り、そこから第三セクターの鉄道に乗り換えるという流れ。なので、朝6時台に都電に乗る。そこそこすでに混んでいた。母の着替えなどそこそこありったけの荷物を持ってでかけたので、少しばかり気まずいほど大きな荷物。申し訳ない。電車を乗り継ぎ、病院の最寄り駅に降り立ったのは朝7時半過ぎ。それから歩いて病院へ。重い荷物が持ちづらい。

 

病院へ行き、指定の場所へ向かう。指示を受けていた看護師の方が対応してくれたけれど「ひとまずお待ちください」と机のあるスペースで待たされてしばしじっとする。忙しいのだろうし、1人の患者にかまっている場合じゃないんだろうけれど、まぁ、しかし何も説明がないのだなぁとぼんやり窓の外を眺める。しばらくすると、先に会計をしてきれくれと言われる。「診察券はありますか」と聞かれるが、緊急入院だったし、それを作れと言われたことがなかったので無かった。どうやら支払いにその診察券が必要らしく、支払うためだけに診察券を作らされる。それから支払い。それなりの金額。再び母のいる病棟へ戻ると、母が車いすに乗っていた。こちらに手を振っていた。意識は以前よりもはっきりしている。ただ、ずっと横になる生活だったからか、車いすでさえ辛そうだった。テーブルの上には、さっきまでなかった身に覚えのない袋がある。想像するに母の手荷物だろうとは思うが、確証はない。少し中を確認すると、身に覚えのある母のものがある。それにしても誰も説明もせずに勝手に置かれている。違ったらどうするのだろう。

 

介護タクシーに移動しようとするところで、母が「乗り物酔いの薬もらえるかな」と言うので、看護師の方に相談すると「あ、ええと、ちょっとお待ちください」と少し曖昧な返事。それからやけに待たされる。20分程度過ぎても一向に誰も反応しない。何なのだろうかと思う。「もう、いいよ」と母も言うが、待つべきか待たざるべきかもわからない。シェイクスピアかよと思う。ようやく30分ほど経ってから酔い止め一つと水を持ってきてくれた。予定の時間よりも45分ほど遅れて介護タクシーで転院先へ向かう。母は少し寒がっていたけれど、車の中に入ったら少し暑かったのか、かけていた毛布を外していた。少し母と会話をすると以前に比べるときちんと返してくれる。話し方はまだだいぶゆっくりだけど、それでも意識もしっかりしている。だいぶ痩せてはいたけれど。

 

転院先の病院近くにくると、高い建物がなくなり、空がとっても広い。雲が多く、気持ちのいい天気だった。雨が降らなくてよかったとつくづく思う。転院先に着く。嫁さんや叔母が待ってくれていた。手続きを済ませる。介護タクシーの精算もする。「ちょっと出発まで待ちの時間もあったので」と言われていた額よりもいくらか高い金額を請求された。うーん、行き場のないやるせなさ。それから母の検査を経て、お医者さんの診断。母は麻痺とか問題はなく、ここからはリハビリへと突入する。ひと月寝ていた体力を取り戻すには2、3か月必要、と言われる。年内は覚悟していたけれど、年を越すのかもしれない。それからお医者さんが少し言いにくそうに「ご自宅に戻られるとしても、状況によってはお1人で暮らすことは難しい状況もありますね」と言う。すると母は「息子の嫁と相談します」とやけにそこだけはっきりした声で応えていたので、僕や嫁もびっくりだった。コロナのこともあり、入院する部屋まで付き添うことはできなかったが、検査の間や、診察の間、母とも話せたので安心した。少し気になったのは母が弱気だったことだ。「お父さんも亡くなって、私一人残ってもね」みたいなことを言う。体力も無くなっていたので、弱気になっているのだと思う。とりあえず食べて、動いて、そして食べて、元気になってもらうしかない。

 

病院を出てから、叔母夫婦が運転してくれて、僕の実家へ。探しても見つからなかった母の通帳や介護保険証を手分けして探してくれた。それから父の墓前に線香を供える。一気に生活感がなくなったことに、まだ途方にくれるしかない。ここに母が一人でこの先暮らすことが確かに想像できない。介護という遠い先の話が徐々に現実のものになってきていることにちょっと面食らう。

 

それから僕は少しばかり仕事もあり、嫁と地元の駅から東京方面の電車に乗る。車窓からは遠くの空がオレンジ色になるのが見える。僕はすぐにうつらうつらして眠ってしまった。朝5時起きはしんどかった。

 

仕事と、母の手続き、いろいろなことがごっちゃになる数日間。とりあえず、やはり、疲れた。