東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『往復5時間。面会10分』

昨日、ずいぶんとお酒を飲んで寝たせいか、いつもよりもゆっくりと目覚める。寝起きはすっきり。翌日に残っていなくて良かった。

 

少し遅めの朝食を食べていると、兄から電話。母と話をしたとのこと。父の相続のことなどいろいろと進めていこうという連絡。ああ、なるほど。そのあたり、母が元気なとき、兄と母でテキパキ進めており、僕はまったくノータッチだった。それが気楽だったし、契約や手続きというものが苦手で億劫なので安心していたのだが、兄が関東におらず、母が入院という極めて待ったなしの状況で、結果、ほぼ何もしらない僕にお鉢が回ってくるという世の中の不思議。

 

嗚呼、申し訳ない。面倒だ。本当に申し訳ないが、これほど面倒なことはない。

どうやら、父のがんばりもあり、予想よりも有難い何かしらが、いろいろアレされるらしく、母や兄も「ハヨセヨ」とはやし立てるが、極めて面倒くさい。今、「ハヨセヨ」とはやし立てられてるのは、テントウ虫か僕くらいだろう。

 

そんなこともあり、少し夜の仕事まで余裕があり。(というのも、嫁と娘は知人のところにでかけたのだが、昨日酔っぱらい過ぎた僕は寝過ごして行かなかったからなのだが。)思い立って母の病院先へ面会に。面会開始が14時なので、そこを目指して向かう。が、大宮駅からバスで移動するので、そのバスのタイミングがなかなかうまくいかない。直接、病院にいかないバスに乗って、最寄りの停留所から11分ほど歩く。歩くのは好きなので全然いいのだが。

 

母はぐんぐん元気になっており、先週会ったときはまだ車いすだったのに、歩行器ですたすたと面会先に現れた。いろいろと話をしようとすると、それを制して、リハビリ病院から請求がきている10月の費用を払っておいてくれ、だとか、父の相続の手続きはなぜしてないのだと言ってくる。元気は良いことだが、元気過ぎていろいろと言ってくる。で、手続きに必要な書類を持ってきたのだが、僕が何も把握せずに、機械的に書類の入ったファイルを持ってきて、「この中のどれかが必要な書類だ」と伝えると、「ちゃんと確認してきなさい」と言われる。まぁ、そりゃあそうだが、こちらも仕事があり、そのうえ、こういった契約ごとが苦手ときている。わからんではないが。だ。

 

で、面会時間はコロナの都合で10分。当たり前だがあっという間に10分は終わる。ほぼ、何もできてない。バス停で駅行きの時刻を調べると驚いたことに、75分くらい先にしか来ない。しばし茫然として、徒歩30分の道のりを駅に向かって歩くことにした。いや、歩くのは好きだ。だけど、少しばかり気乗りしない。

 

仕事にしても、生活にしても、こういった手続きにしても。指示するのや意見するのは自由だ。それぞれの考えもあろう。いろいろ言うべきだ。が、責任を持って対応すること、それこそ片道2時間近い道を、着替えや重い資料を持って移動すること、苦手だし、なんなら多少の金額程度なら無視したくなるほど手続き関係が苦手な立場からすると、声を大にすることはしないが、こっそり言いたい。

 

自分でやってくれ

 

いや、申し訳ない。これは、自分の仕事だ。課せられたことだ。それはわかる。が、漏れて出てしまう。30分ほどの道すがら、長閑な田舎道を歩きつつ、深呼吸したらと息と共に想いが溢れ出てくる。あちらこちらにやることがある。自分がしたいことというよりは、立場上やらねばならぬことばかりだ。長閑な道は晴れて気持ち良い。風が少しばかり北風で冷たいが、歩くとまだまだ汗ばむ陽気が。30分ほどの散歩はむしろ望むべきぐらい、楽しい。が、荷物は重いのだ。そのジレンマ。

 

ようやく駅に着くと、ちょうど電車が来るタイミングでラッキーだなぁと思ったら車両点検で15分ほど待たされた。それも人生。都内へ戻る電車。埼京線は見晴らしがいい。すっかり日が傾き、もう夕暮れの風景。鉄塔と住宅街の向こうに、眩しいくらいの陽射しを発する淡い色の太陽と、稜線がくっきりの山並みがひろがる。雲一つない。学生が楽しそうに話している。うつらうつらして座っている会社員がいる。なんだか少しばかり泣けてくる。おっさんなので、夕日見るくらいで泣けるのである。往復5時間。面会10分。そういうものだ。そういうものなのだろう。

 

一度、家に戻り荷物を置いてから仕事へ。メールをいろいろ返したり、仕事のチェックをする。それから現場へ。と、夜にまた兄からメールがくる。「資料は作り終わった?」。悪気はないだろう。むしろ気にかけてくれているのだ。もたもたする弟で本当に申し訳ない。ただ、今日も24時くらいまで仕事なのだ。「仕事中でまだ作業してないっす」と語尾にまろやかさを加味して戻してみた。そんな三連休の初日である。