東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

椅子はどこで借りれるのか

4日(土)の昼間に、銀座のギャラリーへ、公演場所をもう一度見に行く。大きさや雰囲気を体で覚えるために。ギャラリーの受付がいつも女性のYさんだったのに、その日は年配の男性で、一体どういうつながりなのかよく分からなかった。このギャラリーはやはりお世辞にも大きい場所ではない。だけど、反響はとてもよくリーディングにはもってこいだ。

客席を少しでも多く取るために、あと役者の動きも少し考えて、最初に考えていた役者の配置を変更することにした。あと、ギャラリーの窓からの光が結構入ってくることに気づいた。台本の都合上、どうしても真っ暗にしたい場所があり、そのために遮光をするものを用意しなければならない。そういうことも下見に来たから分かることで、良かった。僕は舞台が真っ暗になる時が大好きだ。少しも光がない、真っ暗な中で次のシーンを待つと、ドキドキする。今回はタイトルにも載せているほど、闇が重要なのだ。

あと少し気にしていたことが、役者の座る椅子で、最初はパイプ椅子にしようと考えていたのだけれども、ギャラリーにとてもいい椅子がおいてあり、それを使うことにした。どこか有名な海外の製品らしく、少し座ってみたけど、全然疲れない。今回のリーディングはおそらく1時間20分くらいになるので、見るほうも読むほうも大変だけど、とりあえず読む方の問題は解消か。問題は見るほうだ。実はまだ客席がない。と、いうのもギャラリーにそんなにたくさんの椅子がなく、自分で用意せねばならないんだけれども、一体椅子はどこで借りれるのだろうか。方々を当たっているのだけれども、まだよく分からない。客席無いとたまんねえなぁ。なんとかせにゃならん。

そんなことを考えていたら、ギャラリーの年配の男性が話しかけてきて、いろいろと話し始めた。ギャラリーに勤めている方なので、とても刺激になるお話をしていただけた。面白かったのがシオリの話だ。シオリはあの本に挟んで読みかけのところの目印にするものだけれども、もともとの由来は、山などを歩いているときに、帰り道が分からなくならないように、木の枝を折って目印を作ったところからで、漢字で書くと文字通り「枝折」だそうだ。その他に、その木の枝は、次から登るときの進むための道しるべになるので、枝折には手引きという意味もあるらしい。そういうことを知ると、言葉の生まれを感じることができて、とても面白い。いろいろ話が弾んでいると、その男性が名刺をくれて、それをみるとYさんと同じ苗字だった。年齢からは、さすがに夫婦には見えないので、おそらく親子だと思われた。

下見をした後、知り合いが出ている芝居を見に阿佐ヶ谷へ。本当は時間が無かったので行くのをよそうと思ったのだけれども、阿佐ヶ谷ならそのまま稽古にも行けるので、行くことにした。初見の劇団だったのだけれども、とても面白かった。徒花団(トカダン)という劇団だったのだけれども、舞台もとてもきちんと作られていて、選曲良し、役者良し、台本良しと、久々にいい芝居を見れた。もちろん、見ていると「ああ、この作家さんが好きなんだな」というところが垣間見えるのだけれども、きちんと自分のものにしようとしている感じも伺えるし、本当に刺激になった。きっと東京にはもっと僕の知らない劇団でも、面白いものを作っている人が沢山いるのだろう。そう考えると、やはり気分としては寺山修二さんではないけれども「書を捨てよ、町へでよう」が必要なのかな。しかし俺は億劫だからな。

稽古は部分的に固めていく。役者さんには読むことになれてもらうために、何度も読んでもらう。ひょっとしたら飽きてしまうのではないかと思うくらい、読んでもらっているので、少し違うこともするべきか。しかし演出だけをしていると、そんなことが全然気にならない。演出しているのは楽しくてしょうがない。練習をすればするほど、作品が形作られていくのが本当に楽しい。もちろんまだまだ足りないところは多い。どんどんシャープにしていく。

5日(日)は稽古が休みだったので、台本に全力を注ぐ。朝から書く。とことん書く。そうして夜に池袋で展覧会の打ち合わせ。次に会うのは12日で、その日は搬入なので、その辺の打ち合わせ。僕はリーディングの際のスタッフ仕事をみんなにお願いする。稽古も必要だけれども、そろそろ当日の会場に関することも準備していかねばならない。少しみんなに提案して、本番前日の金曜に、公開リハーサルをさせてもらうようにお願いした。そうすることで、本番でいきなりするということはなくなるし、一応、展覧会に参加する他の方々にも事前に見せれることになる。心配なのは今回の打ち合わせに、展覧会のリーダーであるMさんが来れなかったことで、やはり「芝居が少しエロイんです」と正直に言おうと思ったのだけれども、それが言えなかったことだ。他のみんなには「いいんじゃない」と言われたが、Mさんは変なところで少々固い方らしく、いきなり公演に待ったをかけるんじゃないかと冗談めかしく言われた。笑い話だけど、本当にそうなったら洒落にならんな。稽古を見に来て欲しいけど、いかんせんMさんは長野に住んでいる。どうなることやら。