東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

埼京生活『断る一日』

■ 27日(日)。バンドかげわたりの家常さんからスピッツのライブに行きませんかと誘われていたのだけど、仕事だったのでお断りした。家常さんのブログを見ると、そのライブの感想が書いてあり、楽しそうでうらやましかった。


スピッツは大学生の頃、めちゃくちゃ聞いてた。とはいってもコアなファンというわけじゃないのでベタに「楓」とか「流れ星」とかそういったものばかり聴いてたのだけど。『隼』とかずっと聴いてた。大学の先輩が「スピッツは日本人の好きなメロディを知っている」ってよく言っていたけどそのとおりだなぁとか思いながらいつも聞いてた。そういえば、かげわたりのバンドの練習を初めて見させてもらったときスピッツの「フェイクファー」を演奏してくれたのだけど、それがすごくかっこよかったのを覚えている。


■ 先週借りてみたDVDなど。

 長谷川和彦監督 『青春の殺人者

前から見たいと思ってた作品。やっと見た。映画の終わりに流れるスタッフロールを見てたら、原作・中上健次と出てきて驚いた。いや、確かこの映画に興味を持ったのはそもそも原作が中上健次だったからではなかったか。どうだったか、忘れた。とにかく面白かった。前半の山場、母親殺しのくだりは本当にすごいなぁと思った。手持ちカメラによる映像が一層緊迫感を増す。市原悦子が女と母親の両面を兼ね備えた女性を怖いくらいに演じてる。たまにやけに演劇っぽい口調になるなぁと思っていたら、特典映像で入っている長谷川監督のインタビューで、市原さんがカメラ目線で台詞を言うのが困ったと語り、演劇出身だからですかねぇみたいなことを言いながら苦笑していたのでした。


■ 僕の世代がどうなのかは知らないのだけど、この映画の主演をつとめる水谷豊を僕がはじめて認識したのは「刑事貴族」というドラマだ。このドラマ、最初は舘ひろしが主役のなんだかハードボイルドな作品だった(僕の記憶では、ドラマのエンドロールは舘ひろしが電話ボックスにパンチを食らわせて電話ボックスを破壊した後に痛がりながらうずくまるというなんだかよくわからないけどそれだけでハードボイルド腹一杯なアレだったと記憶している)のだけどその1代目貴族である舘ひろしがかなり切ない感じで殉職してしまい(包丁を手に持ちつつ逃走している通り魔とたまたま交差点で鉢合わせてしまい、その手にしていた包丁が刺さって死ぬというコントみたいな設定だったと記憶している)、つづいて2代目貴族をこれまたどういう意図なのかよくわからんけど郷ひろみが受け継ぎ(なんとなく貴族なイメージか?)、そしてあっという間にそのシーズンは終わり(やっぱり貴族じゃなかったのか?)、満をじして3代目貴族を担ったのが水谷豊だった。水谷豊になって当初のハードボイルド路線からなんだかコミカルな作品に変わったような気がした。それが当初予定されていた刑事貴族の貴族感なのかは定かではないけど、少なくとも水谷豊が主役の「刑事貴族」は前2シーズンよりも長く続いていた。で、それはともかく、あの路線変更はおそらく水谷豊というキャラクターの存在によるものが多いのではと推測するわけであります。


■ 確か劇作家松尾スズキさんのエッセイだったと記憶するが、何かのドラマで水谷豊が発する「兄貴―!」という台詞があるらしいのだけど、松尾さんは水谷豊が発するその台詞をエッセイの中で、

「ははーんにひーん!」

とか表現していたと思う。当然、実際には水谷豊はそんな風に発しているわけはないはずで、これは多分に誇張した「喩え」だと思うのだけど、なんというか僕としてはこれはかなり水谷豊というキャラクターを的確にとらえた「喩え」だと思えたわけでして。僕の中で水谷豊とはまさに「兄貴―!」を「ははーんにひーん!」と発するようなどこか軽くて気取った感じのする役者であると植えつけられているわけでして。で、長い話になってしまったのだけど、その水谷豊という存在が鬱屈した若者の映画であるはずの本作をいろんな意味で軽い感じにもしているなぁと思ってしまったわけでした。


■ DVDもう一本。

千原兄弟 『プロペラを止めた、僕の声を聞くために。』

千原浩史を『しりとり竜王戦』や『人志松本のすべらない話』等のバラエティでしか知らないのだけど、作・演出を手がけたこういう作品にこそ本領が発揮されているのではないかと思えるコントが盛りだくさんだった。当然、爆笑できる内容のコントもたくさんあるのだけどそれだけではない、というかむしろ素直には笑えない作品もちらほらある。

 
千原浩史の立ち位置がある。その立ち位置から見つめる中ではこれらの作品に大差はないと思える。笑えるか笑えないかは客の好みなのだろうけど、そんなことはおかまいなしの千原浩史の揺るがない立ち位置がある。醒めた立ち位置とでもいうのだろうか。人間の哀れな部分さえも笑うという立ち位置。哀れな部分を見ると大半の人は笑っては不謹慎なのではないかとその場から逃げ出したり、見なかったことにして通り過ぎようとしてしまうが、千原浩史の目線にはそういった弱さはこれっぽっちもない。ありのままを見つめてる気がする。それは嫌味とか中傷とかそういうことではなく、むしろそれが人間なんだよなと理解しているからこそとれる立場なんだと思う。お前はこれを笑える立ち位置にいるか?と挑発されてるようにも感じる。その目線はダウンタウン松本人志にも通じるものだと思う。『ごっつええ感じ』の『とかげのおっさん』とか『ミラクルエース』とか、個人的に名作だと思う『ポチ』は人間の汚さ、卑しさを笑う立ち位置から見つめている作品だと思う。DVD特典として副音声に本人によるコメントが収録されていたらしい。返してから気づいた。聴かなかったことを後悔した。


■ で、昨日の夜。21時半くらいに一月の芝居に参加してもらってる役者から電話があった。なんでも今、新宿の花園神社にいて一月の芝居が無事にいくようにお参りしているところだからお前も来いといわれた。あまりにも夜だったので行くことは丁重に断ってみた。その後で携帯に写メールが届いたけど、満面の笑みで酒を飲んでいる役者の姿が映っていた。そういったわけでいろいろ断る一日だった。