東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『じっと見つめる』

■ たまにポツポツと雨が降って蒸したけど、部屋の窓を開けておくとそこから風が吹いて気持ち良い。いよいよ7月。夏が来る。


■ 30日(金)。仕事後に阿佐ヶ谷へ。かげわたりの家常さんとカタカナの谷川さんと以前、サウナに行った後に話した何かやろうという件についてふたたび話し合う。今回はかげわたりの宮嶋君と里崎くん(といっても宮嶋君と里崎くんは先週の飲み会の続きのつもりで集まったのだけど)、そして鈴木君も参加してみんなでいろいろ話した。


■ 今年の1月にかげわたりと谷川さんに参加してもらって一緒にやった『東京の果て』はベースに僕が書いた芝居があり、そこに映像と音楽をたんに効果として使う以上に取り入れたいと思ってやったので、まず芝居ありきという前提があった。今回はがっちりお芝居ってわけでなく、物語とかを排して、音楽や映像、そして人が合わさったもっとパフォーマンス的な何かをやろうというのがあり、じゃあ、何をやろうかということを具体的に考えようと今回集まったのだけど、いざ何かをやろうとするといろいろ難しい。


■ 僕が今、興味があるのが『回転するもの』で、もっと具体的にいうと風車に惹かれている。それで、今回の集まりとは別に、ちょうど書きたいと思っている芝居の台本があって、それは自転車屋さんがいて、さらにいろいろな『回転するもの』を探している人たちが登場する話だ。だからみんなにもパフォーマンスでやるなら『回転するもの』を何かいれるのはどうかと自分勝手な提案をしてみたのだけど、そこからいろいろと話し合いが二転三転してしまい、結果としてはまとまらなかったのでした。


■ つまるところそれはそれぞれの、ものの見方、視点の違いによるものなんだと思う。それは当然あるものだ。家常さんの視線は時にするどい。そのするどさが音楽を作るうえで反映されている。かげわたりの音楽、ロックははだから時にするどさを持っていると僕は思う。『東京の果て』をやったとき大袈裟に言うと僕は東京という街をするどく見つめる気分になっていて、そういう見つめ方で作品を作ろうとしたとき、かげわたりの音楽というものが作品にすごく合う気がしたから、だからかげわたりに音楽をお願いした。


■ だけど今回、タイミングとして今、みんなでまた何かやりたいねと集まったけど、僕のものの見方が『東京の果て』の時とは変わっていて、まったくするどさがなくなっている。今、僕はただ、じっと何かを見つめていたい。その対象として『回転するもの』がある。そしてもう一つ自転車屋さんがパンクした自転車を修理するあの手付きが気になっている。それをただ、じっと見つめていたい。そこに『東京の果て』で東京を見つめようとしたするどい視点はなくてもいいと思っている。


■ 当然、するどく見つめることから逃げて何か安易なことをやりたいってわけじゃなく、今だからこそやるべきだと僕が思うものをやりたいのだけど、それを『東京の果て』に続くものとして、家常さんや谷川さん、そしてかげわたりの面々に提案したのはちょっとアレだったかもしれない。なにせ、『回転するもの』をただ見るってことを提案したわけだから。そこにはするどさの欠片もない。それってパフォーマンスとして成立するのって宮嶋くんが聞いてきたけど、僕自身よく判らない。家常さんがそういうスタンスなら今の自分やかげわたりの音楽は合わないと思うと率直な意見を言ってくれたけどそれもすごくわかる。みんなが同じようなモチベーションとコンセンサスでもって一緒に作れる何かをやりたいのだけど、僕はだだじっとモノをみたいと言ってしまった。わがままっちゃあわがままな言い分なんです。


■ 家常さんが僕のそれをやわらかい視点だと、話し合いが終わって解散した後にメールで書いて送ってくれた。そういってもらえると有難いようなそして申し訳ないような気分になる。かつて僕は『月を見に行く』という芝居を上演した。お芝居の最後に男と女が月を見にでかける芝居だった。それは単に月を見に行くだけのものだったけど、月を見るために視線を上にあげた人の身体は、僕にとってはあらゆるものから少しだけ解放された自由な身体のようで、その月を見つめるという行為がことのほか魅力的なものだった。今、それに似た気分で回転するものを見つめてみたい気分になっている。だけど、まったくそのときと同じ気分かといったら絶対そうではない。そこに東京をするどく見つめようとした『東京の果て』の経験が加味されているわけで、また異なる今の見つめ方になっている、はずだ。


■ せっかく集まってもらって申し訳なかったけど、今回はとりあえず保留にしてもらった。もちろん、いずれは何かを一緒にやりたい。だから、とにかく、もうすこしはっきり自分がこういうことをやりたいとみんなに言えるように、自分が今、書きたい台本をきちんと書いてみようと思った。まだ、すごくぼんやりとしているけど、回転と自転車屋さんの話。じっと見つめる。