東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『9月17日』

■ 朝、早めに起きて渋谷へ青山真治監督の『サッドヴァケイション』を観に行く。血の継承を拒む男と受け入れる女(母)の対比。短絡的に『女は強し』とは思わないけれど、この映画に出てくる数名(というか全員)の女性の強さは圧倒的で、血や宿命を背負う覚悟の重さを裏付ける説得力を持っていたように思う。正面を見据えて揺るがない石田エリさんの佇まいは圧倒される。


■ それから本屋で『シンセミア』の文庫本2巻を購入。そのついでに『サッドヴァケイション』の小説をちらりと読む。映画のラストシーンが小説ではどういう風に書いているのか気になっていたので。


茶店で『シンセミア』を読む。となりの席で2人の男がなにやらずっと話している。聴くとはなしに耳に入ってくる内容でその2人が何について話しているのか判る。新宿や渋谷、それに池袋といった繁華街の喫茶店でしばしば語られているそれらの内容。決まって、片一方の者がもう片一方に言う言葉がある。「本気で仕事をやった人だけが成功をつかめるから」。仕事に向きあう姿勢は人それぞれだろう。そのどれもを肯定するつもりはないし、僕自身仕事に積極的かというと微妙だからえらそうなことは言えないけど、少なくともその場で発せられたその「本気」には、あらかじめ望まれた「本気」があり、それ以外を認めない気持ち悪さがあるように僕には思える。まぁ、つまりは「本気で仕事をせよ」なんて人に言われたくないのだ。


■ 夜。渋谷のライブハウスで行なわれたかげわたりのライブを久しぶりに観る。新曲もアレンジを変えた昔の曲もとてもかっこよかった。数回芝居を一緒にやったことがあるMくんがカメラを持ってライブに来ていた。開演前にしばし話す。M君は僕に言う。「松瀬さん、写真はね、写すものじゃないんですよ。」と。それで、では写真はなんなのかと問うと、「写真は射つ(うつ)ものです」とMくんは言った。つまり「真を写す」ではなく「真を射つ」で『射真』なのだと。Mくんらしい表現だなと思ったのだけど、そう言葉を発するMくんの物言いがなんだか面白くて言われた瞬間に大笑いをしてしまった。楽しいライブでした。