東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『9月27日』

■ 職場の方が、池袋で多分僕の兄だろうと思われる人を目撃したという。以前僕が、兄は骨太でガタイがよく僕より少しだけ背が低いというようなことを言ったことがあり、そのような体格で、顔が僕に似た男を目撃したらしい。つまり、まぁ、職場の人が想像する僕の兄像にぴったり合致した人物を目撃したということ。その日、兄は池袋には行ってないので、それ明らかに違うのだけど、一度おめにかかりたいなと思った。どれくらい似ていたのか、その男は。


そういえば僕は幾人か友人にそっくりの別人を街で目撃したことがある。顔のつくりは違えど体格や服装のチョイスが似てる人から、もうドッペルゲンガーに違いねぇという人まで。友人のドッペルゲンガーを見た時は思わずその場で友人に連絡をし、確認を取ったものだった。「目の前に、ドッペルゲンガーがいる」と伝えると「写メを撮れ」と告げられたが、それいきなりやったら変質者だからと断念した。あれはほんとにドッペルゲンガーだと思えるほど似てた。


■ 『シンセミア』読了。ほんと面白かった。阿部和重さんにとっての山形県神町青山真治さんにとっての北九州、宮沢章夫さんの描いた北川辺、山下敦弘さんの『松ケ根』、ケラリーノサンドロヴィッチさんのフリドニア、カネコアツシさんのソイルニュータウン、そして中上健次さんにとっての和歌山県新宮、実際の町から創作の町まで。『どこにでも路地はある』のだろうけど、その路地を発見する視線はほんとすごいなぁと思う。それにしてもなぜこれほど路地に魅了されるのか。


河瀬直美さんの『沙羅双樹』の特典メイキング映像『2002年の夏休み』を観る。監督は松江哲明さん。松江さんの作品、初鑑賞。序盤は作品を作る河瀬直美さんを追うも、徐々にカメラは主人公の2人に焦点が向けられる。撮影が進むにつれ、2人の表情が次第に変化していく姿をカメラは見逃さない。主人公の心境の変化を、ヒロインへの、というかヒロイン役の少女への恋心だとにらんだ松江さんは、最後にそのことを少女に告げるが、少女はその問いかけを笑顔で受け流す。そして突然のカットアウト。作品は終わる。あの笑み。嘲笑とか、哀れみとか、嫌悪とか、拒絶とかとも違う、あの笑み。あの笑みの魅力。少女は確実にその夏に何かを得て前を向き、少年は、その夏のよろこびを失うことを恐れてグズグズしていた。少女の成長は途方もなく、男はおいてかれてしまう。ああ、サマーオブラブ。